Their story | ナノ


Their story ≫ 2

夜 (side.A)

一度どうでもいいと思った対象がどうなろうが、関係ないと、秋野は考えている。
関係ないが、いつ何をしたら相手を深く傷つけることが出来るかについて、考えることについては余念がない。
今夜は久々にこの場所で過ごすことに決め、秋野は自分の定位置であるベッドに横になり、先程葉加瀬が先程去り際に呟いた言葉を思い出した。

『秋野は時々、残酷で残忍だ』

言われたところで、秋野にはどこが残酷で残忍なのか、理解できない。
秋野は自分の事を普通であると思っている。
世間一般的には不良のカテゴリに入るかもしれないが、それさえ、秋野にとっては取るに足らない、どうでもいいことであるため、気にしたことはない。
怖いと感じるのならば、怖いと感じたままに怖がってくれればいい。
下手に何かを期待され、求められるよりはそうして近づいてこられない方が、遥かに気楽だ。
秋野はそう考えている。

(普通、だと思うけど、な)

残酷で残忍だと、葉加瀬から初めて言われたのは、何時だっただろうか。
出会った頃だったかもしれないが、明確に思い出すことは出来なかった。
まさか、同じ内容の言葉をもう一度聞くことになるとは思わなかったと、自分一人になった部屋の中、秋野は笑った。
どうでもいい相手を気に掛ける優しさなど、持ち合わせてはいない。
これまでもこれからもそれは、何が起こったとしてもかわることがないと、秋野は思っている。
たとえば血のつながっている実の父親が死んだところで、自分は何も感じることはないのだろう。仮に、世話になっている人が死んだら話は別だが。

(――――――、)

そのような考えを、指摘してくれていた人物は、秋野のするこということに対して、悪いことを悪いことであると嗜めてくれた人は、もういない。

「―――――?」

ふと、ある人物が思い浮かんだ秋野は、首を傾げた。
何故、此処でその人物が出てきたのか、秋野には理解できなかった。

「なんだ?」

小さく、吐き出してみたところでその原因は分からない。
何故今この場所で、全く別の内容を考えていたにも関わらず自分の脳裏に都の姿がよぎったのか、秋野には解らなかった。

2011.10.27


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