Their story | ナノ


Their story ≫ 2

夜 (side.E)

ふ。と、意識が浮上して都は目を開けた。

「……………一時」

喉が渇いたと思いながらキッチンへ足を向けながら、人の気配を探ってみたが、秋野がいる気配は無かった。
最近珍しいことが続いていた所為で、何処か不自然な感じがする。
そう思ってみたものの、これがいつも通りなのだという事を、都は思い出す。

「よくない、なぁ」

意味もなく、根拠もなく自分がダメになっていっている気がする。

「………、」

それでも、秋野がいないことに対して寂しい、と思う自分がいることも確かで、こんなことは一度も思ったことも感じたこともなかったのに。と、都は思う。
現に、以前の同室者が友人と遊ぶために部屋に戻ってこなかった時、都は何とも思わなかった。もしかしたら単に、連絡が入っていたためかもしれないが。
それにしても、こんな風にまるで心に穴が開いたような気分になることは今までなかった。

「変なの」

口に出せば殊更、変な気がしてきた都は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出し、蓋を持ってそのまま自室へと戻った。
しぃん、と静まりかえっているリビングに、このままいる気にはなれなかった。
以前ならばこんなことはなく、一人、無音状態の中でリビングのソファーに座り、しばらく何をするでもなく、ぼんやりと過ごす時間があったのに。
都は思う。

(変なの)

もう一度、今度は心の中で呟けば、それは確かに、変な事であるかのように思えた。
ふと、寝る前に見たメールの文面を思い出してしまった都は、自室に入った瞬間微かに眉を寄せ、部屋の隅に置いてあるパソコンを見つめた。

「―――やらなきゃ、だめ、かなぁ」

もうやらないと言ったのに。
そう考えながらも、それでもパソコンを立ち上げ、言われたことをやろうとしている自分は、酷く矛盾している。
渋々といった様子で、都はパソコンの前に腰を下ろした。

「別の人に、頼めばいいのに…」

文句を言いながらも、キーボードを叩く。程なくして出てきた情報をメールに添付すると、深い息を吐いた。
タンッ、と、エンターキーを押し、目的のアドレスに送信できたことが分かると、今度はパソコンの電源は落とさず、スリープモードに切り替えた。

「………あ、落とせばよかった」

スリープモードもシャットダウンも大差ないと思い直した都は、そのまま再び布団の中へと潜り込む。
潜り込む直前に、先程メールを送った相手が携帯電話にメールか電話をしてくるだろうと予想をたてた都は、携帯電話の電源を落とし、おやすみなさい。と呟いた。

2011.10.24


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