Their story ≫ 2
着信 (side.E)
秋野が部屋から出て行った後、都はぼんやりとどこに行ったのだろうか。と、考えていた。
席から立ち上がり、玄関に向かったためにいってらっしゃい。と、声をかけたが、それは間違っていなかったらしい。
いってらっしゃいと、思わず言っていた時、自分にも驚いたが、秋野の表情を見てそれにも驚いた。
「親衛隊、いないんだ」
割と気になっていたこが分かった都は秋野が親衛隊の存在を知らないだけなのではないか。とも思ったが、彼にまつわる話を思い出し、彼の親衛隊がないという話は本当のことなのかもしれない。
そう思った。
それでも、秋野に親衛隊がいないことが不思議で仕方ない。
所属クラス関係なく、見目が良い人がいたらその人にはいつの間にか親衛隊が出来ている場合がほとんどだ。にも、関わらず、秋野は親衛隊がいない。と言い切った。
親衛隊の存在を黙認している人と公認している人はいるが、同時に自分に親衛隊がいることを知らない人もいる。秋野の様に“親衛隊はない”と断言できる人(特に美形)の方が少ない。
「………、」
そんなことを考えていれば、指定着信音が鳴った。
電話ではなかったらしく、着信音は数秒で途切れる。
都はゆっくりとした動作で、リビングのコンセントにさした充電器に繋がれている携帯電話を取りに行き、画面を開き見てその内容に微かに眉を寄せた。
誰からのメールかは、すでに分かっている。今鳴った着信音は登録相手に勝手に設定されていたもので、変えようにも変えることが出来ない。音さえ聞けば、誰からのものかは、すぐに分かってしまう。
「なんで、」
小さく呟き、携帯電話の画面を閉じるとテーブルの上に置き、その場に座り込み、ローテーブルに突っ伏した。
「もうしない。って言ってんのに」
小さく呻くと、意を決したかのように都はゆっくりと立ち上がり、自室へ入るとパソコンの電源を入れた。
(あ。頭、痛い)
そう思ってしまったら最後。都は立ち上がったばかりのパソコンの電源をおとし、ベッドにもぐりこんだ。
どうしようと、考える間もなく、都の意識は落ちた。
2011.10.17