Their story ≫ 2
林間学校 (side.E)
そういえば、もうすぐ林間学校だね。
都が言えば、秋野は不思議そうな表情を浮かべていた。
あれから、時間は遅かったものの、何かを胃に入れてから薬を飲んだ方が良いだろう、と秋野に言われ、彼が作った物をゆっくりと、都は食べている。
「林間学校?」
「………滋くんは、去年とか、出たんじゃないの?」
「…………………出てねェ」
ていうか、そんなもんあったのか。
心なしか表情を険しくさせながら言われ、思わず、都は箸を進める手を止めた。
「――――――――、」
言っていいものか、悪いものか。考えているうちに何度も口を開けたり閉めたりしていた都は、秋野にそれを指摘され、困惑気味に彼を見つめた。
「何」
「う、んと……」
「言えば」
中途半端に迷われてるとうぜェ。
そう言われ、自分はうざいのか。と、都は若干落ち込んだ。
ただ、本心からの言葉じゃないのかもしれない。という思いもある。
理由は分からないが、言葉の割に、秋野は怒っている様子も苛立った様子もなかった。
「毎年、この時期になると新入生歓迎会を兼ねた林間学校があるんだ」
言ってから、都はサラダを含み、咀嚼する。
(あ。このサラダ、食べやすい)
そんな事を思いながら秋野を見れば、なんだその無意味な行事。と、言われた。
「………無意味?」
「あー…だってよ、ほとんどが持ちあがりじゃねーか」
意味ねーだろ。秋野の言葉に、確かにそうだけど。と、都は思う。
それでも、誰かと一緒に何処かに出かけ、何かをすることが今まで数える程しかない都にしてみれば、楽しみに思ってしまう行事でもあった。
「………そう、かな」
「ちげぇの?」
都の言葉に普通に返しながらも、秋野は自分で用意した大盛りの焼きそばを食べ終え、サラダも食べ終え、麦茶を飲んでいた。
そんな秋野を見て、一体どうしたらそんなに大食いになれるのだろうか。と思うものの、今は別の話をしていることを思い出した都は、頭を切り替える。
「無意味じゃないと、思ってる人も、いるかも」
「――――――どうだか」
やはり、理解できないのか、そう返した秋野を見て、都は少しだけ哀しく思った。
2011.10.02