Their story | ナノ


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林間学校 (side.E)

そういえば、もうすぐ林間学校だね。

都が言えば、秋野は不思議そうな表情を浮かべていた。
あれから、時間は遅かったものの、何かを胃に入れてから薬を飲んだ方が良いだろう、と秋野に言われ、彼が作った物をゆっくりと、都は食べている。

「林間学校?」
「………滋くんは、去年とか、出たんじゃないの?」
「…………………出てねェ」

ていうか、そんなもんあったのか。
心なしか表情を険しくさせながら言われ、思わず、都は箸を進める手を止めた。

「――――――――、」

言っていいものか、悪いものか。考えているうちに何度も口を開けたり閉めたりしていた都は、秋野にそれを指摘され、困惑気味に彼を見つめた。

「何」
「う、んと……」
「言えば」

中途半端に迷われてるとうぜェ。
そう言われ、自分はうざいのか。と、都は若干落ち込んだ。
ただ、本心からの言葉じゃないのかもしれない。という思いもある。
理由は分からないが、言葉の割に、秋野は怒っている様子も苛立った様子もなかった。

「毎年、この時期になると新入生歓迎会を兼ねた林間学校があるんだ」

言ってから、都はサラダを含み、咀嚼する。

(あ。このサラダ、食べやすい)

そんな事を思いながら秋野を見れば、なんだその無意味な行事。と、言われた。

「………無意味?」
「あー…だってよ、ほとんどが持ちあがりじゃねーか」

意味ねーだろ。秋野の言葉に、確かにそうだけど。と、都は思う。
それでも、誰かと一緒に何処かに出かけ、何かをすることが今まで数える程しかない都にしてみれば、楽しみに思ってしまう行事でもあった。

「………そう、かな」
「ちげぇの?」

都の言葉に普通に返しながらも、秋野は自分で用意した大盛りの焼きそばを食べ終え、サラダも食べ終え、麦茶を飲んでいた。
そんな秋野を見て、一体どうしたらそんなに大食いになれるのだろうか。と思うものの、今は別の話をしていることを思い出した都は、頭を切り替える。

「無意味じゃないと、思ってる人も、いるかも」
「――――――どうだか」

やはり、理解できないのか、そう返した秋野を見て、都は少しだけ哀しく思った。

2011.10.02


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