Their story | ナノ


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享受 (side.A)

大丈夫、なの?

そう言った都を、秋野は不思議そうに見た。
自分で言うのもなんだが、秋野の見た目は怖い(らしい)。目付きが悪いために当然かもしれないが、大抵が一目見て恐怖を抱いた表情をする。それに慣れていた秋野は、今更ではあるが、いろんな意味で都が珍しかった。
興味本位。そう言ってしまえばそれまでだが、今まで誰に対しても自分で自分の感情が分からない状態になったことがなかった秋野は、秋野なりに困惑していた。

「………何が、」

思わず、低い声になってしまったが、都はビクリ、と体を震わせただけで、その瞳には恐怖は浮かんでおらず、その事に安堵する。

(………………なに、ホッとしてんだ?)

分からない、と思いながら、無意識に撫でていた都の髪から、手を離す。

「ぇ、と、その……」
「何」
「ぅ………、さっきの、副会長、だったから…」
「は?」

都の言葉を聞き返した秋野は、再び都の口から意識を失う直前にこの部屋に来たのは、転入生と副会長であったという事を聞き、理解した。
秋野は、馬鹿ではない。

「平気だろ」
「そ、か」

なら、良いんだ。と、ホッとしたように笑った都を見て、じわり、と秋野の胸は熱を持った。

***


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