Their story ≫ 2
その後 (side.A)
少し、体が弱いだけ。って、いったいなんだ。
秋野が思っていれば、玄関の鍵が外される音が聞こえた。
だからと言って、室内まで入ってくることはできない。
これでもし上の鍵をしていなければ完全に室内に入ってきていただろうことを思うと、不法侵入でしかない。
そう思いながら鍵を開けた者を睨み付ければ、相手は若干怯んだ様子だったものの、鍵を外せだのと言い始める。
「――――――るせぇ」
仕方なしに鍵を外しては見たものの、室内へ入ってこようとする前に首根っこをつかみ、追い出し、扉を閉める。
「あなたは、」
「病人いんだよ、静かにできねェのか」
「輝」
「輝あきらうるっせェんだよ…」
殴ろうかと思ってみたものの、後々のことを考えればそれはやめておくべきだろうと、秋野はぐっとこらえた。
変に騒がしさがある方向を見れば、どうやらあの口うるさい転入生が気を失っているようだった。
(ざまぁ)
そんな事を思っていれば、つい、口の端があがっていたのか、何を笑っているのだと問われる。秋野は更に口の端を上げた。
「くっだんねェなァ」
そんなにそいつが大切なら、大切に大切に、籠ン中にでも閉じ込めとけ。
秋野は言い、冷めた目で天城を見下ろしながら、その傍に不法侵入をしようとした奴を、放る。
「金輪際、コイツを俺の傍に近付けんなよ?」
うっかり殺しちまうかもしんねェからな。
その言葉に、顔を青ざめさせた者がいたが、秋野は気にならなかった。
「アイツにも、だ」
アイツが誰なのかを聞く者が居なかったため、輝が目を覚ましたら謝りに来てくださいという言葉を、黙殺したまま踵を返したが、思い出したように振り返り、言う。
「その前にてめーが謝れ。さっきしようとしてたことは不法侵入ってんだよ」
今度してきたらただじゃおかねェ。
そう言い捨て、返事も聞かずに秋野は部屋へと戻った。
***