Their story | ナノ


Their story ≫ 2

その後 (side.E)

扉が閉まった音を聴き、安堵した都は、ほ、と息を吐く。

「あ、ご、ごめんね、ありがと」

自分の体を秋野が支えてくれていることに気付き、都は離れようとしたが、そうしようとした瞬間、ぐらり、と視界が揺れた。

(ああもう、ほんとに、)

忌々しいと思いながら、都は秋野の服を無意識に掴んでいた。

「お前、どっか悪いのか」
「ぇ………、あ、」

訊かれて、しまった。と、都は思う。
ただ、秋野の声は不快なものではなく、心地良いものだったために、するりと、答えが口から出ていた。

「悪い、っていうか、あまり激しい運動はしないように、とか、熱をよくだすとか、そういうの、だけで……」

少し、体が弱いだけだと思う。

「……………、」
「滋くん?」

何の答えもかえって来ないことを不思議に思い、秋野を見上げれば、都の体はふわり、と、宙に浮いた。

「――――!?」

驚いて声も出せずにいれば、気付いたときにはベッドの上に下ろされていた。

「あ、の、」
「寝ろ」

熱、出てんだろ。
秋野に言われ、都は何故気付いたのだろうかと思いながらも、彼の言葉に素直に頷き、ありがと、そう言った後すぐに、意識を手放した。

***


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