Their story ≫ 2
来訪者 (side.E)
なんとも形容しにくい空気を破ったのは、けたたましいチャイムの音だった。
「だれ、だろ……」
思いながらも、出てくるね。と、言い、都は玄関に向かう。
秋野は何かを言いかけていたが、何度もなるチャイムの音を止めるには、出るしかないと思った都は、扉を開けて、絶句した。
「なぁ!結城来てないか!?」
頭が痛い。なんか余計に悪化してきた気がする。
そう思いながらも、都は彼の言葉に答える。
「結城?あ、篠、か…来てないよ?」
「嘘だ!」
「…………、」
嘘って、本当の事しか言ってないのに。
都は思ったが、それを声にすることは出来なかった。
ぐらぐらと視界が揺れる。
「結城!いるんだろ!?」
「……………、っ、」
倒れそうだと思った瞬間、都の視界は大きく、揺れた。
「てめぇら、騒がしい」
「あ!滋!!なんだよこの部屋だったんだな!」
「輝になんてこと言うんですか!」
ああ、また支えてもらってしまった。
そんな風に思いながら、無意識に、都は秋野の服を握りしめていた。
一瞬、驚いたように秋野に見られた気がしたが、頭痛を堪えるために、すぐに瞼をおろしてしまったために本当のところはどうなのか、都には分からなかった。
「なんで最近逢いに来てくれないんだよ?!」
「嫌いだから」
秋野と、転入生の声が遠くに聞こえる。
やっぱり、彼の相手をするのは大変そうだ。
ぼんやりと思いながら、都はなんとか自分で立てないものかと再び目を開き、秋野から離れようとしたが、そうできなかった。
(え、え?)
立とうとした瞬間、ふわり、と体が宙に浮く。
(なに、なになに、!?)
動揺するものの、声にならなかった都は、困惑しながら秋野を見るが、彼の視線は違うところにあるようだった。
「なっ!嫌いって!簡単にそーゆーこと言っちゃいけないんだぞ!」
「マジうるせぇ」
その言葉のあとすぐに、鈍い音がする。
「滋く、」
「病人前に騒いでんじゃねーよ」
何が起こったのかを聞く前に、扉が音を発てて閉まり、都は思わず、ほ、と息を吐いた。
***