Their story | ナノ


Their story ≫ 2

夜街 (side.A)

苛々する時は決まって誰かを傷付けた。
いつからこんな風になってしまったのか、わからない。誰かを傷つけることによって自分の中でも何かが壊れていっているような気がしたが、自分が壊れる分には構わなかった。
秋野は自分の価値を低く見ている。
夜の街に出るようになったのはほんの気紛れだった。自分の鬱憤を晴らすことが出来れば、良かった。
ただ、何故か街を歩くたびに人を助ける羽目になり、結果として憂さ晴らしが出来るため自分にとって都合が良かっただけにも関わらず、いつのまにか仲間が出来ていた。
たまに煩わしいと思う事もあるが、それなりにうまく行っていたと思う。こんな事さえなければ。
凍てつくような視線を感じながら、冷静に秋野は考えていた。

「どしたん?」
「別に」

仲間に聞かれ、即答した秋野は拳についた血を服で拭う。
そうして倒した相手には目をくれず、その場を後にしようとした。

「―――“Sleep”の総長って、アンタ?」

唐突に聞こえてきた声に、だるそうに視線を巡らせ、声の主を確認すると、秋野は不機嫌そうに眉を寄せ、言った。

「帰る」
「りょーかいっ」

秋野の発した声に反応したピンク頭のチャラ男は歩き始めた彼の後へと続く。
それを許さなかった相手は、踊り出るように秋野の前に立ちはだかった。

「そりゃないっしょ?俺と遊んでよ、総長さん」

ニヤリと笑いながらそう言ってくる金髪碧眼の相手を見て、秋野は溜め息を吐き、不機嫌を隠そうともせずに言い放った。

「テメーには他に遊び相手いんだろ」
「どーゆーこと?」

きょとんとした様子で言う彼に向かい、秋野は答えを返さずにだりぃ。と呟いた。

「なぁ!どーゆーことか、聞いてんだけど!?」

無視すると尚更面倒なことになる予感がした秋野は、嘘を告げる。

「そもそも俺、“Sleep”に入ってっけど総長じゃねーし」
「うっそだぁ!さっきからずっと見て「あっち走ってったけど?うちの総長」うそっ!?」

秋野の投げやりな台詞を信じたのか、彼は秋野が指差した方向へとかけていった。
この機を逃してはならないと、秋野と連れは早々にその場を後にする。
誰もいないと分かって戻ってきてどうしようと、秋野のたちの知った話ではなかった。

「ハル」
「ん?」
「アイツ、似てねェか」
「んー??」

ハル、と呼ばれた相手はううん、と考えるように俯き、パッと顔をあげると、調べとくよ、そーちょー!と、笑いながら言った。

***


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