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勘違いの弊害

※出来損ない認識されてる主人公とその使い魔的存在と、転入生他


もうむりもうむり、こんなに長く、あの子たちと会っていないのなんて、初めてのことだ。それもこれも、転入生につきっきりになってるからに他ならない。そろそろほんとに、耐えられない。転入生に連れまわされるのも、周りから殺されそうな視線で見られるのも、残念そうな視線を向けられるのも、耐えられるには耐えられるけど、それはあの子たちがいたからであって、あの子たちがいなかったら死んでるも同然だ。

「おれ、みはるに、みっかもあえてない……」

思わず呟けば、先を行っていた転入生(困ったことに同室者でもある)が振り向いて、不思議そうにしていた。と、認識するまもなく、視界が滲む。転入生もその周りも、ギョッとしている様子だったけどそんなのは関係ない。一度溢れてしまった涙を止めることができずに、あいている方の手で涙を拭っていれば、多分、副会長の凍ったような声が、聞こえたような気がした。ものの、それを聞くこともせずに、もうやだあ。と、言ってしまっていた。

「もうむり、ほんとやだ。みはるに、う、みはるだけじゃないけど、ひくっ、」

とにかくみはるに会いたい!って、叫べば、転入生もびっくりしていた。あ。もしかしたら大きな声出したの、高校に上がってから初めてかもしれない。どうしよう。と、思っていれば、聞きなれた足音が聞こえてくる。悲鳴を上げている人がいることを不思議に思いながら、聞きなれた音がする方を見れば、みはるがいた。綺麗な綺麗な、獣の姿がそこにはあった。

「み、みはる!」

瞬間、え?!と、言う声が聞こえたような気がしたけど、そんなの、関係ない。とにかくみはるに触れたくて、転入生の手を振り払って、みはるのいる方に走った。そんでもって、ダイヴ。

「みはるうううううううううううううううううううううう三日ぶり久しぶり元気してた会いに行けなくてごめん会いに行きたかったんだけど隙見つけられなくて行けなかった会いたかったみんな元気?じゃなかったみはるは元気?元気だよねここに来てくれるくらいだからあっでもだいじょうぶなの?みんなのとこ離れてだいじょぶふっ」

三日ぶりに会えたことが嬉しくてみはるの体に抱き着いて、ぐりぐり頭を押し付けながらそう言っていれば、突然みはるの感触が変わった。あ。これはみはる人型になってる。と、思ったときには抱きしめられてて、視界が真っ暗になっていた。

『で?これを泣かしたのは、誰だ?』

ちょ、みはるさん、苦しい。苦しいです。そんなことを思いながら暴れてみたところで、みはるは離してくれない。もしかしてもしかしたら、会いにいかなかったこと、怒ってるのかもしれない。だって今までは毎日会いに行ってたし。うーうー、みはるさん、許してください。不可抗力です。でもフギンとムギンにみはるに伝えといてとは言っておいたのにな。あの双子、面白くなりそうだからってまた伝えてくれなかったのかな。もっと確実な子たちに頼めば良かった。でも見かけるの多いの、フギンとムギンだけだし。

「お前、使い魔はいないはずじゃ」
「う?」
『―――――馬鹿が』

多分、今聞いてきたのは会長で、少しだけ余裕ができたスペースから転入生のいる方を見れば、会長が驚いていた。舌打ちの後、みはるがめちゃくちゃ低い声で呟く。やだこわいよみはるさん。と、思いながら見ていれば、困ったように笑って頭を撫でてくれた。わあい。

『之は使い使われる関係を厭うていてな。我等が幾度契約を持ち掛けた所で聞きはしない』
「………だってだって、契約したら友達じゃなくなっちゃうじゃん!」
「え?!」

なんでそこで君が驚いちゃうの、転入生くん。とか、思っていれば、これだから。と、言いそうな様子でみはるに溜息を吐かれ、周りは唖然としている。そりゃあ、やろうと思えば契約だってなんだってできるけど、周りみてると幸せそうな子たちがいないから、それだったら別に、このままでいいかな。なんて。呼んだら来てもらえるし。呼ばれても行けるし。一方的に呼んできてもらうだけじゃ、不公平じゃないか。とか、なんとか。心の中で呟いていれば、お前がそう思っていることは、知っているよ。と、みはるが笑ってくれた。

「―――――演技だったのか」
「ふぇ?」
『ふむ』

なんか怒っている様子の会長もろもろを不思議に思っていれば、みはるが頷いた。

『コズエ』
「ふあい」
『今度からは試験の時に我等のことを呼べ』
「ええー、なんで?なんで?みはる此処来たくないって言ってたじゃん。あれ?でもどうして今日は来てくれたの?」

今気付いた!と、そう聞けば、呆れたような視線を向けられる。いやだみはるさん、イケメンが台無しです!!

「うー、呼ぶの、は、別にいいけど、みんなは、無理だよ…教室入りきらないだろうし…みはるだって困るでしょ」
「―――――?!」

周りが何を驚いているのかわからないけど、禁域の森に棲んでる子たちだから呼んだら呼んだで大変なことになるだろうし、そうなったら学校もみはるも困るだろうから今まで試験の時に呼ばなかったのに。呼ばなくていいように頑張ってきたのに。あ。それが演技だったのか?って、会長様は言ってたのか。なーるほど。

『来るのは上位三名で良いだろう』
「……じょういさんめい?」
『コズエは気にしなくていい。我等の方で決めておく』
「うぁい、」

こうなったらみはるはこっちのこと、聞かないからなあ。仕方ないなあ。って、思いながら笑っていれば、そろそろ帰る。と、言われてしまった。やだやだ、せっかく久しぶりに会えたのに。もう少し一緒にいたい。と、思いながらしがみつけば、みはるが声を出して笑った。

「連れてって連れてって!みんなにも会いたい!」

そう言って、獣の姿のみはるの背につかまって学校からエスケープしてしまった僕は、そのあと、学園中がものすごい混乱にみまわれることになっているだなんて、知る由もなかった。

2013.04.07


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