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ひいき、だめ、ぜったい。

※理事長と転入生


「要りません」
「え!?」
「だから、要りません。と、言いました」
「えぇ!?」
「要らないんです、普通のにしてください。今すぐ。特別なカードなんて要らないんで。ほんと、必要ないんで。お願いします。なんなら土下座しても良いです。それでもだめならもう金輪際名前で呼びません。おじさんって呼びます。叔父さんって言うのも嫌なんで理事長、でもいいかもしれませんね。あっなんだかいい気がしてきました!これから理事長って呼ぶことにします!」

たのむからやめてくれ。と、言い、理事長であり俺の叔父であり、俺を転入させてくれた男は言った。ただでさえ副会長にファーストキス奪われかけて(どっこい持ち前の反射神経でどうにか阻止することが出来た)人間不信になりかけているのにこれ以上特別な事が増えたら困ります。困るったら困ります。ちなみに、案内の副会長に出会い此処まで連れてきてもらう間に何故か気に入られてしまった俺は名前呼びを強要された。生徒会役員とか明らかに人気ありそうなやつの下の名前をぽっと出の俺が呼んでいたら何をされるか分かったもんじゃないので、即座に相手に向かって渾名と名字、どちらがいいですか。と、尋ねた。もちろん渾名は変態で、名字は普通に名前の氏の事ですけど。と。それでもなお下の名前で呼べと言う相手に、渾名と名字、どっちがいいですか。変態先輩。と、尋ね、そんな遣り取りを続けていれば徐々にしおらしくなり、名字で良いです。と、諦めてくれた。万々歳。

「ところで、俺のクラス、どこですか?」
「ああ、それはね、Sクラスだよ!」
「ハァ?」

思わず素が出てしまった俺に、叔父貴は珍しく顔を赤くさせている。怒りからですか、すみません。どうか血管がキレませんように。あともしかしたら、変装するの拒否ったからってのもあるのかも。そりゃあね。そりゃあ美形とか言われますけど。どう考えても身内の贔屓目。不細工が変装したらより不細工になるのでそんなのは断固拒否。認めません。両親は基本的に俺のコト放置で家政婦さんも変装していったほうが。なんて言っていたけどそんな面倒な事誰がするか。と、言う話で。したがって俺は今、不細工を晒しています。おそれいります、すみません。

「ああ、すみません。つい」
「もう、ドキッとするからやめてくれ…」

ドキッとってなんだ。ドキッとって。怖いんじゃないのか。恐ろしいの間違いとか気色悪いの間違いじゃないんですか。違うんですか、そうですか。それにしても、特別にブラックカード持てるのにそれを突き返したからか怒りで顔が真っ赤なんですね。でも要らないものは要らない。なんていうか、無理矢理に入れてもらってその上特別に扱われるのは本当に、心の底から、困る。親戚はなんていうか、俺に甘すぎるんです。困ります。敬語じゃなくてもいいのに。とか、そっちのが困ります。あの副会長と精神年齢一緒なんですか?そうですか。

「俺、そんなに成績よくなかったですよね?家柄が割と良い事は分かっていますけど成績悪かったですよね?いけて精々Bくらいがいいところじゃないかと思うんですが。また贔屓ですか?俺もう贔屓とかそういうの、要らないんですよ。分かりますか、要らないんです」

にっこりと笑って言えば、叔父貴は顔を更に赤くさせながら、そうだね。贔屓は良くない、良くないよね。うん。そう、成績的に言えば、君はCなんだけど、家柄があるからBクラスになるんだよ。と、言い直してくれました。
従って俺はBクラスに編入することになりました。
後で秘書さんに聞いたところによると、俺がSクラスに入ることによってクラス落ちする子がいたらしく。その人にクラス落ちの話がなくなったと連絡しておきます。と、嬉々として喜んでいた。もしかしてその相手にフォーリンラブなのかもしれない。と、思ったのは此処だけのお話です。ちなみにBクラスなら大丈夫なのかと尋ねれば、特進であるSクラスのみ人数制限があるとのことで、突っぱねて断って良かった。と、俺は心の底からそんなことを思ったのでした。

「あ、理事長」
「――――――なんだい、智」
「転入、認めて下さってありがとうございました」

パタン。と、理事長室の扉を閉めた後、叔父が扉の向こう側で悶絶していたことなど、俺の知ったこっちゃない話だった。

2012.11.04


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