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俺のモノ。

※風紀委員長*猫かぶり/ヤンデレ(?)


「だめだよ、コイツは俺のだから」

ああ、もう耐えきれない。と、思った瞬間、俺はお気に入りだったはずの転入生を突き飛ばして、萩春<はぎはる>に駆け寄って、抱き着いていた。猫かぶりも忘れて。溜息を吐きながらも、萩春は俺を抱き上げてくれる。風紀委員長なんかしてる彼氏を持つと、大変だ。ただ、一般生徒はともかく、親衛隊にはもうすでに認めてもらっている。認めてもらうために、こんなキャラクターを演じることになったけど、それはそれで良かった。だって、ほかならぬ好きな人のためだったから。

「翔琉<かける>?」
「いくらキミでも、あげない。コイツがキミの事好きだなんて、そんな気色悪いコト、言うのやめてくれる?」

だけど、ダメだよ。やっぱり、認められない。萩春がお前の事を好き?そんなわけないじゃんか。萩春は俺の事が好きで好きで、好きで。俺の事を壊しかけた。壊されかけた俺は、それでも萩春を嫌いにはなれなくて、絆されて付き合っている。だけど付き合ってそれなりの年月が経てば、多少なりとも情がわくものだ。萩春以外に抱かれることは嫌だけど、萩春にだったら、良い。萩春にだったら、何をされても構わない。と、思うようにまでなってしまっている。

「なんでだよ!!なにいってるんだよ翔琉!!萩春は俺の事が好きなんだ!!なぁ、そうだろ!?翔琉なんかやめて俺にしろよ!!萩春!!」

萩春の視線が、冷たいことに気付いてる?君の周りは、気付いてる。さすがにそこまで落ちぶれてはいなかったみたい。

「そんなわけ、無いよ」

だって、もし萩春がキミのこと好きだったら、キミはとっくに、この世界からいなくなってるもの。俺の言葉に、何を言われているのか理解できない、という表情をしてるけど、これは事実。今まで萩春に好きになられて、壊れなかったのは俺だけだ。萩春が好意を抱いた人間は、みんな、みぃんな壊されてしまった。精神病棟に入ったり、植物状態になってしまったり、お墓の下に逝ってしまったり。例外は、俺だけ。だから萩春は俺から離れられないし、俺の事を離さない。それは、俺にも言えることだけど。

「萩春!!」
「……………うぜぇな」

漸く言葉を発した萩春の声は、低かった。ああ、こうなってしまってはもうダメだ。少しだけやめてほしいと思ってしまった俺は、萩春の首に抱き着く力を強めるけど、それはただ、萩春が俺の事を抱きしめる力が強まるだけの事だった。萩春が抱いてしまった殺意は、消えない。流石に、完全に殺すまでは行かないだろうけど。

「目障りだ」

鈍い音がその場に鳴り響いて、俺は何が起こったのかを悟る。だけど、誰も何もできないことを知っているから、萩春に抱き着く力を強めるだけ。きっと、萩春の肩口に埋めている顔は、醜く歪んでいる。

「てめぇのせいで、コイツが傷つけられていたことを知ってたか?」

それは別にどうでもいいんだけど。第一、萩春で慣れてるからあまり苦痛とか感じないし。まぁでも、萩春にとってはどうでもいいことじゃないか。

「同じくらい傷つけてやってもいいけどな、生憎俺はてめぇのことなんざどうでもいい」

言うね、萩春。転入生の傷ついた顔がみたいけど、それ以上に、自分で思っているよりも、体はダメージを受けていたらしい。首を回すのも、億劫。

「はぎはる」
「どうした、翔琉」
「風紀委員長が、風紀乱したらダメ、だよ?」

一応止めたけど、多分、転入生の末路は変わらない。

「それより、約束。破っちゃってごめんね」
「…………ああ」

なんだ、今思い出したんだ。てっきりそれで物に当たりながら食堂まで来たと思っていたのに。

「下に任せて、部屋、行こうよ萩春」
「そうだな」

呻いている転入生をそのままに、萩春は歩き出す。俺はさっきからずっと、萩春に抱き上げられたまま。

「バイバイ」

多分部屋で、俺の体についてる数々を見てしまったら、萩春は原因を作った転入生も、そうするように指示した周りの人間にも、何らかの処罰を与えるだろう。俺はそれが、少しどころかかなり、楽しみで仕方ない。

2011.10.25


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