other | ナノ


other ≫ box

予想外

※クラスメイト兼同室者/転入生空気


基本的に会話が成立しない。それでもコイツと一緒にいるのは、何故なのか。答え、面白いから。好きか嫌いかで言ったら、好きだ。ライクかラブかで言ったら、ライクだけど。だってラブとか言ったらコイツが意味不明な答え返してきて終わりだ。そんな答えならいらねー。ラブじゃなくてライクのままで、良い。絶対告白なんてしない。ラブじゃなくて、ライクだ。断じて、ラブとは認めない。

「すっぽーん!」
「アホかぁっ!!」

そんなことを考えていれば、『外見で判断する奴は友達になってくれなくていい。こっちから願い下げだ』と、敵意剥き出しの自己紹介をした目元が見えないくらい黒いもじゃ髪した転入生にソイツが自分から突っ込んで行き、何故かカツラを手に持って笑いながら踊っていた。転入生が唖然としている。ああ、あと教師とクラスメイト達も。驚いてないのは俺とコイツくらいだろう。即座に突っ込んだ俺は自分自身にも思わず俺がアホか!と、突っ込んでいた。ああ、哀しい。なんだこの状況。

「ばかだろ!お前ばかだろ!!」
「びゅーん!」
「お、ま、え、は!!」

カツラ投げ飛ばしやがった!!ポイ捨て、ダメ、絶対!!しかも空飛んでるし!いや、見てたけど…みてたけど其れにしたってこれは…ダメだろ。そう思った俺は、教科書丸めてカツラ投げ捨てた(飛ばした?)張本人の頭を叩いてやった。パコーン。と、結構良い音がした。と、思ったらヤツは小刻みに震えながらしゃがみ込みやがった。擬音つけるならぷるぷる、って感じだ。ちなみに周りは呆けているからか、カツラが飛んでいることに気付いていない。

「何か理由があってカツラをしていたのかもしれないだろ!?もしハゲだったらどうするつもりだったんだよ!?しかもバーコードハゲ!!もしもそうだったら滅茶苦茶恥ずかしい思いさせるとこだったじゃねーか!転入初日に!!」
「……………ちちんぷぷいぷいのぺいっ」

合掌しやがった。なんだその呪文。意味不明。転入生はいまだにショックなのか、呆然自失状態。うん、ごめん。でもコイツの行動は予測不可能だから止められなかった、多分。いやしかし、本当、ハゲじゃなくてよかった。これで禿げてるの隠すためのカツラだったら俺はもうどうしたらよかったのか。このバカは傍にいると楽しいし面白いけど、時々、酷く疲れる。同室者でなければきっと一生知りあわなかっただろうと、常々思う。

「あー……成瀬」
「なんすか先生。カツラなら取ってきませんよ?ポイ捨てダメだけどもうあれは手に終えない」
「未公認飛行物体X」

いち早く立ち直った担任にそう返せば、何故か双眼鏡を覗きながら転入生の頭からカツラを取った張本人がそう続けた。

「はっ!?え、ちょ、なんで飛んでるんだよ?オレのカツラ……っ」

このアホがただカツラとって放り投げるだけで済ますはずがないじゃないか。カツラを手にした時に目にもとまらぬ速さで転入生が来る前まで弄ってた飛行機のリモコン式プラモと合体させてから飛ばしたんだよ。現にいま、ヤツの手にはリモコンが握られている。片手に双眼鏡、片手に小型リモコン。飛行する、黒いカツラ…なんだかシュールな気がしてきた。あ。転入生にツッコミいれ忘れた。

「諦めろ、転入生。むしろその容姿なら歓迎される。みてみろ。彼らの目の色が変わったろ。良かったな、これでお前の友達百人計画は成功に近付いた!」

いや、友達百人計画してるなんて口から出まかせだけどな。そんなことを思いながら、転入生の肩に手を置き、それとは逆の手でぐっじょぶ!のカタチを取りながら満面の笑みで言えば、何故か転入生が徐々に俺から離れていく。不思議だ。

「木津……」
「くらえっ!忍法かげぶんしん!!」
「…………こず、お前忍者だったのか」

担任の声が聴こえたが、そんなことより忍法のことが気になった俺は、そう訊いていた。
そのまま何も返されずに引きずられて、辿り着いた先は、屋上。

「なるのばかぁ」
「……………」

二人きりになると途端、まともになるこいつはどうにかならんのかね。無理か。極度の人見知りをどうにかしようとした結果、ああなったんだもんな。しかしみんなの前だと俺の前ですら電波キャラになるとはどういうことなのか。

「ばかじゃねーし。こずのが馬鹿だし」
「ううう」
「なに、」
「近すぎるだろ!転入生と!!近すぎた!!!」

え、なにそれ。なんかちょっとやきもちやかれてるみたいに思えて嬉しいんだけど。とか、思ってたら勢いよく抱き着かれた。あっれぇ、なにこれ。初めての体験。
普通にしてれば普通に美形なのになあ、なんでこいつはみんなの前だと電波になるんだか。後、俺以外の人の気配があれば俺と二人でいても電波になるから驚きだ。とか、考えてたら信じられない言葉が聴こえてきた。

「好きなのにぃ」
「は?」

え、なに。今なんて言った??

「それはライクで?ラブで?」
「もちろん!ラブ!!!」

まさか、コイツから告白されると思わなかった俺は、しばらく呆然としてしまった。

2011.10.17
(ぼくがなるの前で電波にならないの、なるに一目惚れしたからだし!!)
(えっマジで……俺知らんかった)

*木津<こず>×成瀬<なりせ>


copyright (c) 20100210~ km
all rights reserved.
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -