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みあげたそらは

※会長の元恋人


空を見上げる。
見上げるたびに綺麗だと思えた頃の空を思い出して、目を閉じた。
転入生が来る前は良かった。
彼が来てから、学園は荒れに荒れ、人気者たちは盲目になった。
何も見えていないと思える状況で、どうにかしようと躍起になったのは親衛隊たちだった。
再び目を開けたところで入ってくるのは鈍色の空。
あの頃と同じように、綺麗だとは思えない。
その原因が誰にあったのか、何にあったのか。
全て、分かっていたもののどうにかしようとは思えなかった。
結局、転入生はこの学園を荒らすだけ荒らし、飽きた。という言葉一つでいなくなってしまった。
本当に、最初から最後まで自己中心的なヤツだったとそう思う。
ただ、そのおかげで、転入生がこの学園から去り、この学園をどうにかしようとしていた生徒たちは、意気消沈した人気者たちに転入生の実態を伝えた。
話すだけでは通じないと、最初から思っていたのか、物的証拠を突きつけた上で話をした結果、彼等は元通り、とは言えないものの、元通りに近い形に戻ることが出来た。
かといって、壊れてしまった関係が全て、元に戻るわけではない。
感傷的だと、笑われるだろうか。
自虐的だと、詰られるだろうか。
そうだとしても、構わない。
同じ思いは、もう二度としたくないのだから。
現状維持に努め、前進も改善も何もかも、必要ない。

「俺は、」
「―――何度来ても、答えは同じですよ」

名を呼ばれ、その後に続けられた言葉にそう答える。
俺は、誰の事も好きにはならない。
恋など必要ない。
絶対的な愛さえ在れば、それでいい。
家族からの、兄妹からのそれがあれば、満たされる。

(嗚呼、でもそれは嘘だ)

本当は恋をしたままでいたかった。し続けていたかった。
付き合っていたからと言って、何処かで、それが続くとは思っていなかった。
ただ、実際にそれを突きつけられると心が酷く、軋んだだけの話しであって。
今更、好きだと。転入生の事は遊びだったのだと。
そう囁かれたところで、一度変えてしまったこの気持ちは変得る事ができない。

「仕事に戻ったらどうですか、会長様」

もう二度と、名前では呼ばない。
また来る。と、言い去って行った元恋人の後姿を見送り、息を吐いた。

加筆修正 2012.09.30
mutter 2012.09.01


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