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知ってるよ。

※腹黒(?)同室者→疑心暗鬼転入生/同室者side


コン、コン。

今日も僕は彼の部屋の扉をノックする。
三週間。
彼が学園中の人に嫌われて憎まれて、疎まれて、校舎に行かなくなった時間。
僕は、彼の部屋の扉を叩き続けている。

「ごはん、テーブルの上に、置いておくね」

彼等が彼から離れて行ったのには、理由がある。
僕だって人間なんだ。
彼等から受ける仕打ちが頭にきてしまったから、彼の周りからいなくなるように、手を回した。
単純馬鹿はすぐに心変わりする。
今は、多分もう彼に興味すら持っていない。
何故、あんなバカげた行為をしていたのだろうか。と、思っている事だろう。
そう仕向けたのは、他でもない、僕。
お蔭で今の僕の生活はものすごく平和。平和、そのもの。
机に落書きをされることもないし、下駄箱に生ごみを入れられることもない。ロッカーを汚されることもないし、教科書の間にカッターの刃を仕込まれることもない。

「僕は、好きだよ、三觜………ハル君、の事」

バタン!

「……………ッ」

酷い顔。
彼は下手な変装をしていて、それをとれば滅茶苦茶可愛い。少し僕より身長が高いけど、とても可愛い。
泣いていたのか、目元が赤く腫れていた。

「な、んで、名前………」
「……嫌、だった?」

少し、ショックを受けたような表情を作って、彼に言う。
やっぱり、彼の泣きそうな顔は、可愛い。笑っている顔も可愛いけど。
そう思うようになったのは、彼の周りから誰もいなくなった後。
僕以外の誰もが、いなくなった、その後。

「嫌、じゃ、ない………」

前は大きな声で話してたのに。
今は、か細い消えそうな、小さな声。
小さく震えている彼を、優しく抱きしめた。
びくり、と、震えた後、彼は体の力を抜く。

「じゃあ、ハル、って呼ぶね。これからは」

三週間ぶりに見た彼は、少し前とは違っているようで、多分、彼なりに嫌われた理由を考えたんだろうな、と。そう思う。
けど、きっと答えは見つかっていない。

「―――――――うん」

返事の後に、伺うように顔をみられて、何?と、きけば、名前、と、言われる。

「名前がどうかした?」
「下の、名前で呼んでも、いい…?」

すごく不安そうな表情。
当たり前だ、彼は、彼等からもう下の名前で呼ぶな。と言われたのだから。
三週間前の出来事は、仕掛け人の僕ですら、酷いと思うような事だった。
けど、だからこそ、彼は考えようと思ったんだろう。

「いいよ。林で」
「…………………りん、」
「ごはん、食べよ?ハル」
「―――――――ん」

なんだか以前の彼とは全然違うけど、それでもやっぱり、僕はきっと、君の傍から離れない。

( 君を一人ぼっちにした責任は、ちゃんと取るよ )


end.
2011.09.29


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