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魔性の男

※会計←会長


ハッピーエンドがいいなあ。

「なんだそれは」
「ハッピーエンドといえば、ハッピーエンドだよ、かいちょー」

くるくるとペンを回しながら、休憩とばかりに眞鍋が言う。三津橋はそれに理解できん。と、返しながら書類に判を押した。
転入生の案内役だった副会長が上機嫌だったことは分かったが、だからと言って自分の影響力を知っている自分がわざわざ出向くほどのことでもない。と、思った三津橋は結局、今の今まで一度も転入生の姿を書類上でしか見てはいない。眞鍋に関しては一度接触したことがあるらしいが、それ以来関わってはいない。どのようにして転入生の毒牙(話を聞く限りそうとしか思えない)から逃れたのか、三津橋がそれを聞けば笑って話をはぐらかす為、三津橋が詳細を知ることはできなかった。が、現時点、転入生に好意も嫌悪も持っていないのはこの学園内では三津橋と眞鍋だけであると言える。つまるところ、それは興味すら持っていない事になるのだが、その事に二人は気付いていない。
副会長と書記は転入生を好きになり、特選で入ったはずの生徒や親衛隊を持つ者までもが彼を好いていると言う。風紀委員会は彼等の行動を取り締まる事で忙しく、以前より強姦未遂事件などが増えていると言う。

「べつにさぁ、恋するのは自由だと思うよお。けどさあ、恋に恋して周りにまで迷惑かけて挙句自分がやらなきゃいけないことを忘れてずーーーーーーーーーーっとそのまま、ってのはかいちょーてきに、どぉ?」
「………何を考えている、眞鍋」

端整な顔を歪め、そう言った三津橋に対し、にしし。と、眞鍋は嗤う。かいちょーがそれでいいなら、別にいいやぁ。と、笑ったその表情の奥で、眞鍋が何を考えているのかは分からなかった。

「でもすごいねぇ」

寄って集って、一人の人に夢中になるだなんて。
眞鍋の言葉に、三津橋はコイツが転入生に興味を持たなくて良かった。と、思っていたがそんなことを知る由もない眞鍋は、今日も今日とて自分に与えられた仕事をこなし、果てには他の者がやるべき仕事にまで手を回す。それは会長である三津橋にしてみても同じだった。

(お前の事が好きだと言ったら、どんな顔をするだろうか)

生徒たちは転入生を魔性の男だと言っているが、自分にしてみては、この男の方が余程、魔性の男だ。と、そんなことを三津橋は思いながら、眞鍋に向かい、小さく微笑んだ。そうしてそろそろどうにかすべきだな。と、続け、椅子から立ち上がり扉へと向かった。

2012.08.22


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