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要らないって言ったのに

※王道転入生と親戚の転入生と、お姫様体質副会長


大きな門を見上げて、溜息一つ。何故こんなことになったのか。拒否は出来なかったのか。否、できるはずがなかった。あの人はいつも強行突破だ。一度決めたことは何が何でも通す。そんな唯我独尊、自分中心主義の両親に育てられたからだろうか。兄は両親と同じような感じになってしまった。しかしながらオレは、自分で言うのもなんだが、結構まともに育った方だと思う。
ふつーに小学校中学校高校へ進み、遊びと言ったら日中にファーストフード店に入って喋ったり、ゲーセン行ってゲームしたり、カラオケ行ってバカ騒ぎしたり。ただ、少し違うのは何故か男に告白されることが多かった。と、いう事だ。したがって、と、言うか、母親には明らかにカツラだと分かってしまうもの(これがカツラだと分からなかったら相当におバカさんだ)、と、ビン底眼鏡を持たされた。
さて、比較的まともに育った方だと自負するオレが、このオレが。こんなものを装着すると、あの快楽主義者な母親は思っているのだろうか?答えは、否。
出来るだけ母親の望む姿で生活をしてきたが、これからは全寮制。自分勝手に自由気ままにさせてもらう予定だ。つまり、つけるはずもなく、それらは道中、迷惑にならない場所(つまり、ゴミ箱)に捨ててきた。

「…………………と、」

こんな、回想に浸ってないでそろそろ中に入らなければ。と、門を開けてもらうために連絡口を探す。間違っても飛び越えるような事はしない。母親は何故か楽しそうにそう言っていたが、オレは夜、外に出ているように見せかけていただけで実際はクローゼットの中で惰眠をむさぼっていたため、喧嘩が強い族潰し、と言われるはずもない。と、いうか喧嘩は弱い。もし集団リンチにあったら確実に、死ぬ。まあ、そうなりそうになった時で寮の部屋に閉じこもり、自己学習すればいいや、とか、思っている。なんて甘美な檻。

「………あれ、どうしたんですか?」

門の内側に入れてもらうと、なんとそこには美形さんが蹲っていた。何故か何かをぶつぶつ言っているけど、そんなことは知らない。と、いうわけでも、まあ、案内頼んでたわけでもないしいいか。と、思い、素通りしようとしたら腕を掴まれた。

「待って!折角伊都に言われたから離れて案内しに来てやったのに!先に行くのはユルサナイ!!」
「………はぁ、そうですか。どちらさまですか?」

振り返って一言。そいつはどうやらこの学園の副会長らしい。そんでもって『伊都』と、言うのは今学園の生徒会連中が夢中になっている、らしい。それはまあ、なんというか。ご苦労様です?そんなことを思いながら、ありがとうございますですが案内は不要なのでどうぞその子の取り合い頑張ってください。と、言えば、何故か呆然とした顔された。

「…………………君、」
「はい?」
「顔と、セリフあってないね」
「……………初対面の人にそんなこと言われるなんて、心外ですね。貴方のその作り笑い、胡散臭い上に似合わないからやめた方が良いですよ?って、言われたかったんですか?「え?」それならそうと言ってくださればよかったのに「え…」ていうかあのくそばか兄貴……寄こすにしてもこんなバカやろーよこすなよバカやろう。電話してやろ「えっ!?」はいもしもーし。こちらあなたの愛しの弟ちゃんですよ。そうそう、すっげー年が離れてるおれおれ。古都って名前の可哀想な子ども。ていうかなにそれ。はい?あー、そう。は?甥?あれ、マジで?オレこんな若いのに叔父さんなの??え、てか兄貴いつの間に子供作ってたんだよ。は?マジで?うわー、マジねェわ。マジ可哀想、このオレが。ていうかなんでそんなヤツ入れたんだよ。そうなること分かってたんじゃねーの?まあいいや。オレ別に気にしねーし。あっちはオレの存在しらないってことだろ?「ええっ」あーそりゃまあご愁傷様。え?やめていいの。ダメなら言うなよ、一瞬期待した。あー、ソウデスネ。アリガトウゴザイマスオニイサマキヲツケマス。バカヤロウ今から行ってやる。首洗って待っていやがれ!」

あー疲れた。マジもういろいろと、ないな、これはない。しかしながら今から明確な用事が出来た以上はそれをこなさなければならない。それにしても、呆然としてる副会長様、どうしようね。

「なんで…」
「はい?」
「どうして、だって、僕は自然な笑顔…」
「はー…なんかよくわかんねーですけど、とりあえず初対面の人に愛想笑いじゃない普通の笑顔みせることできるヤツがいたらオレはすんげー驚きますね。そんでもってマジコイツ人間なの、とか思いますね。てか、その笑顔が作り笑いとかそうじゃないとか本人にしかわかんねーっての」
「…………ぁ」

なに、その、たった今気づいた、って顔。理解できないんだけど。目からうろこ、みたいな顔してオレの顔見られても。

「まあ、オレ予め兄貴からパンフもらって学園内の設備の位置とかは知ってるんで案内いらな「案内させて!!」はい?いやでも視線煩そうだし」
「…………正直、最近、伊都の傍にいるの疲れるんだ」
「いやそんないきなり身の上話されても…」
「僕が話してるんだから聞いてよ!!」

いいやもう勝手にしゃべらせとこ。
そんなこんなでなぜかオレは、それからの生活、副会長に付きまとわれることになったのでした、まる。でも不思議なことに、兄貴から聞いてた制裁とかそういうのはまったくなかった。後、オレにも親衛隊とかいうのが出来た。未だに甥だという、『伊都』ってやつとは接触すらしてない。不思議なこともあるもんだ。

2011.09.27


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