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ヒーローにはなれない

※少し思考回路がおかしい主人公


助けられたら、助けたかった。けど、できなかった。ヒーローだったら良かったのに。そう思う。転入生の横で、怯えたように過ごしている彼を、助けるべきかとも、思った。けど多分、大丈夫だと思う。と、腐男子でもある友人が言っていた。最近の脇役は、転入生の取り巻きの中から付き合う相手が出てくるのだと。そう、言っていた。だから、傍観に徹することにした。
事実、それから数週間して、転入生の取り巻きだったはずの不良と、その子はくっついたようだった。
学園内は騒がしい。全寮制で、男子しかいないのだから仕方ないと言えば、仕方ないのかもしれない。それでも、何故か落ち着かない。せわしない。親衛隊が解散したせいで、強姦やらは増えているという噂も聞く。
平々凡々な自分は運のいいことに、全く関わってはいない。
関わらなければ多分、卒業まで比較的平和で平凡な暮らしが送れるはずだ。
だが、何がどうして、おかしな空気は伝染し、感染するということなのか。そうだとしたら、まるで、悪いウイルスの様だ。
別に、誰が誰と付き合おうが知ったこっちゃない。ただ、それが、なんかの矛先が自分の方に来るとなれば、話は別だ。何がどうして、自分に矛先が向いたのか。なあ、転入生。お前はもしかして、地球を侵略する、宇宙人なのか。いつのまにか、お前を怯えていたお前の同室者、お前と同じようなKYになっているぞ。理解不能。

「…………俺とアンタ」
「ん?」

怪物怪獣宇宙人、そいつらにしてみれば、地球人の方が敵なんだろうが、生憎ここは、地球だ。つまり、怪物怪獣宇宙人こそが、敵。

「ただの、クラスメイト。友達でもなんでもない。だからあの宇宙人みたいなノリで話しかけてこないで」
「てめえっ「ダメだ!ながれっ」っ」

でも、どうして?と、ソイツは言う。ああ、ああ、もう本当に残念すぎる。やっぱり宇宙人は侵略してたんだ。地球に。

「あー…学校辞めてぇ」

空と友達にでもなろうかなー。今なら空飛べそうな気がするなー。なんか、胸元掴まれてる気がするけど、何も見えない。何もされてないんじゃねーの。後、なんか言われてる気もするけどシラネ。

「あのさぁ、」

漸く反応したからか、嬉しそうな表情されるけど、不良が可愛い。とか言ってるけど、馬鹿ですか?アホですか?お前の目は、節穴ですかぁ?もう無理、何が無理って、すべてが、ムリ。ああでも好きな子は可愛く見えるって言うもんな。恋愛フィルター恐ろしい!!

「俺、宇宙人とはよろしくするつもりねーのよ。分かる?日本語通じる?転入生と同じ風になっちゃった転入生の同室者サン」
「―――――――――っ」
「て、めぇっ」
「後、ねぇ。もう誰と誰がくっつこうがどうでもいいけど、見た目平々凡々だからって声かけてこないで。転入生と同じそのノリ、やめて。一回喋ったら友達とかマジない、ありえない。あーでも、その場しのぎのそれに関しては頭いいと思うけど自分が巻き込まれたからついでに他人も巻き込もう、って?うん、その思考はいただけねーな?残念ながら宇宙人を倒してくれるようなヒーローはいねーのよ。俺はヒーローになれねーの。だから精々恋人であるそこのふりょーさんにでも守ってもらってください、ナ。と」

窓枠乗ってから気付いた。ここ、三階じゃん?まぁ、いっか。うまく着地すりゃあ、大したダメージもこねーだろ。制止する声を振り切って、窓枠蹴って、飛び降りる。運動神経には自信あり、な、俺。
ま、完全に完璧に宇宙人に洗脳されてなかったら、アイツはこれ以上関わってこないっしょ。あーもう、ほんと、ヒーローだったらアイツラどうにかしちゃうのになー実は宇宙人とか、ねーの?実は俺、ヒーローでした、とか。ねーわな。
ああ、でもこれだけは言っとこ。

「地球人、アイシテル!!!」

なんかいろいろ聞こえてくっけど、なんてか、今日は授業さーぼろっと。宇宙人になっちゃたかもしれねー人に話しかけられちゃったし。あーあ。どうしたってヒーローになれない俺は、こうしてどうにかしてこの場をしのぐしかないわけだ。自分で。
明日の朝は相当早起きして、グラウンドに白い粉で「求む。ヒーローになる方法」と、でも書いておいてやろうか。あーあ、ゆーうつ。

2011.09.26


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