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狂った歯車

※生徒会親衛隊隊長達


目を閉じて、次に開いたときに、すべてが元通り。そう、だったらいいのに。現実は、そううまくはいかない。

「それで、今回はどうしました?」

生徒会室の扉を開き、生徒会長の前に行き、転入生と他の生徒会役員の前で、私は言う。陰口が聞こえてきても、そんなものは無視。相手にするだけ、時間の無駄。
生徒会役員は揃いも揃って、頭が弱かったらしい。
正直、もうそろそろ無理だろう。今までなんとかして押さえつけてきたけど。せめて、誰か一人でもまともな、周りが見えるヤツがいたのなら、少しは違っていたのかもしれないけれど。
作り上げた虚像、認められた偶像。それを見抜いた人に抱いた感情は果たして、本当に恋なのか。

「親衛隊を、解散させる。すべて、だ」
「分かりました」

まさか、私が即座に肯定するとは思わなかったのか、会長は驚いている。けれど、それすら、どうでもいい。

「何も、言わないのか」
「……?何か、言ってほしいのですか?」
「いや、」

周りの役員も言い淀んでいるが、私の知ったところではない。
可哀相に。純粋に尊敬し、慕っていた者も親衛隊の中にはいた。接点を持とうとしないから、その事に気付かなかっただけで。気付けなかった。

「あ」
「なんだ」

一つだけ、思い出した事を言うために、扉にかけた手を止め、後ろを振り返り、会長を見る。

「親衛隊によって今、護られている方が、親衛隊が解散することによって襲われ、立ち直れなくなったら」

私は別に、生徒会長の事が好きで親衛隊隊長まで上り詰めたわけではない。気付いたら、なっていただけであって。私の言葉で貴方が何を思おうと、どうでもいい。だからこそ、告げることが出来る言葉。

「あなた方の判断の所為、になりますね?生徒会役員様方」

社会に出れば、顔の持つ力など知れている。その事に何故、気付けないのか。

「まっ」

負け犬の遠吠え?上等。けれど私は、自分の顔を恥じていない。これは、親からもらった宝物。
転入生が制止の言葉を言いきる前に、音を発てて生徒会室の扉を閉め、外に出た。

「………何を、しているのですか?」
「待ってたんだよー!」
「やはり、解散、ですか…」
「………………そうですかぁ」

上から私、副会長親衛隊隊長・あっくん、会計親衛隊隊長・ゆいちー、書記親衛隊隊長・れーちゃん。仇名で呼んでいるため、本名は覚えていないけれど。それで、問題がない。

「すべての親衛隊を、解散させるそうですよ」

また、騒がしくなりますね。と、言った私に、彼等は言う。

「みぃちゃん、そうさせるつもりない癖にー!」
「既にもう手は打ってある、そんな顔を、してるよ?岬さん」
「でも会長もバカですねぇ。みーさんのコト好きなら好きって、回りくどい事せずに伝えてしまえばよかったのに」

嗤う彼等は、生徒会役員を見限った。転入生に夢中になり、自分のすべきことを忘れてしまった、彼等を、私は見つめた。

「今、なんと?」
「会長はみーさんのこと好きなんですよぉ」

なにそれ、初耳。なんて。れーちゃんは何をしたいのか。そんなことを聞いた所で、計画を止めることはしない。こうしている間にも、泣いている人は、増えている。

「――――――、親衛隊解散の報告と共に、始めましょうか。早急に」

一度、転落して下を見るといい。彼等の気持ちにも、なってみるといい。今まで傷ついた人たちの分まで、苦しんで、悩めばいい。

「もし、止まったら、どうするの?」
「止まらないさー、落ちぶれた無能に、脳みそなんてないんだよ!」
「嬉しそうですねぇ、あっくん」
「副会長、落ちたら、ゲット、するんでしょう?あっくん」
「わっ!ばか!!みぃちゃん…いまの、きこえた?」
「むーっむぅーっ!!!」
「ゆいちーが苦しそうだよぉ…」

あっくん、そんなこと考えてたんですか。今頃ゆいちーの口元隠したって遅いですよ。

「ま、お好きにどうぞ?私はこの学園を、立て直すだけですから」

狂った歯車を直す為に、必要な駒は揃っている。

2011.09.26


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