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君のすぐ後ろ

※霊感体質と転入生と副会長


「安心しろ。男は恋愛対象外だ。」

寮の部屋の入口、扉を開き、入ったところで顔を合わせた瞬間、同室者と思わしき男(触り心地の良さそうな黒髪ストレートに切れ目)に、そう言われた転入生‐風間壽‐(茶髪に普通顔)は、動きを止めた。その後ろで、彼を案内してきた美形(ウェーブのかかったミドル丈の金髪にカラコンでも入れているのか、紫色の瞳)も動きを止める。

「は?」

自己紹介を忘れ、思わずそう言っていた風間に、男は言う。

「当然だろう?僕は女が好きだ。良いから後ろの、そろそろ黙れ。話が進まん。必要以上に宜しくするつもりはない。」
「え!?」
「………貴様がこれから守護霊なしで生活させたいというのならば話は別だが?」

片眉をあげ、不機嫌そうに、淡々と後ろの、と言われた風間は後ろを振り向くが、其処に何かが見えるわけでもなく、なんかわけわからないこと言ってるけど、お前が同室者なんだよな!あ、俺の名前は、と、自己紹介しようとしたところで男が言った。

「松蔭零です。まつかげ、か、まつ。このどちらかで呼ぶのをおすすめします」
「え、え、と、あの」
「なんですか。嗚呼、貴方の自己紹介は要りません。後ろのにされましたから。余程愛されているようですが、限度と言うものがあります。お願いですから僕を巻き込まないでくださいね。これでも僕は平々凡々とこれまでを乗り気……あ」
「ま、ちょ、待てよ!さっきからなんなんだよお前!!アタルが困ってるだろ!?俺もわけがわからない!!!」
「……………………………………………………副会長。何故あなたのような美形…いえ、失礼。役職をお持ちの方がこちらに?」

思わず反論を返した風間自身にそこで初めて視線を向け、松蔭は信じられないものを見たかのように、目を数回こすり、その後瞬きをし、たっぷり数十秒間をあけた後、風間の後ろに立っていた美形に向かい、そう言った。

「壽を送ってきたのですよ」
「それはご苦労様です。先程の会話、きかれていましたよね」
「え、えぇ、まあ……」

貴方が壽に興味がないという事だけは、理解できましたが。と、答えた彼に、松蔭は微笑む。その笑顔に風間と美形が一瞬動きを止めたことに、松蔭は気付かない。

「その通り。ですが、聞かれた以上は貴方にも協力していただかないといけませんね。聞いて、頂けますか?」

尋ねられているはずにも関わらず、酷い威圧感をその身に纏っている松蔭を見て、美形は自分でも気づかないうちに、首を縦に振っていた。それを見て、松蔭は言う。

「では、たくさんの人の目がある場所でこの人、嗚呼、風間君でしたね。風間君に近付かないでください。教室に来るのはもってのほか、食堂で見かけたからと言って、間違っても生徒会役員全員を引き連れて頬にキスなどしようとしてはいけませんよ。全校放送で呼び出すのもやめておいてください。どうしても呼びたいのならば、そうですね。風間君。携帯電話は持っていますか。持っているのならば、今この場で副会長とメアドを交換しておくのが良いでしょう。電話番号はダメです。いつどこで誰が聞いているかわかりませんからね。直接会えるんですから、電話できないことくらい我慢してください。それから、いくら彼に見てほしいからと言って、職務放棄することもいけません。生徒会役員が普段何にも興味を示さない貴方が転入生に興味を持ったことによって彼に会いに来ようとしたら、どんな手を使ってでも止めてください。後、風間君。貴方は先輩に敬語も使えないんですか?友達だからという思考は捨ててください。学園の外でなら話は別ですが、学園内ではあくまで、先輩後輩という括りを忘れないで接するべきです。親しき仲にも礼儀あり、というやつです。自分中心の思考を振りまくのもなるべくやめておいた方が良いと思いますよ。確かにこの学園内はおかしいところが多々ありますが、順応することも必要です。もし順応できないのであれば、この学園をおかしいと思っている人たちを集めて味方を作ってからした方が無難です」

松蔭のその言葉に、美形も風間もピシリ。と、動きを止めた。風間と彼は松蔭の言葉に逆らうことが出来ず、赤外線で連絡先を交換済ませた後だったものの、二人共一体松蔭は何者なのだろうか。という疑問がぐるぐると脳内を駆け巡っていた。

「あ、貴方「幾らお前がどう言おうとその提案は却下だ。後ろの、少しはそのうるさい口を閉じろ。喚くな。僕が区別をできるようになったのはつい最近なんだ。―――――――すみません、副会長。なんですか?」……………っ、後ろの、とは…?」

誰に話しかけているのか、あらぬ方向を見て言う松蔭に、美形は勇気を出して尋ねた。特にためらいもせず、松蔭は答える。

「あなた方の後ろにいるいわゆる守護霊、というやつですね。信じていただけないかもしれませんが、僕には霊的なものを見る力があるようですので」
「えっ!?」
「……………それから風間君「壽!」風間く「壽って呼んでくれよ!!れ「まつかげ、或いはまつと呼んでくだ「れ「まつかげ、か、まつ」…………まつ、」なんですか、壽君。ヒトの言葉は遮るものではありませんよ。最後まで聞いてください。聞けないのならば黙っていてください」

淡々と冷たく言い放たれ、それまでこのような態度で相手をされることがなかった風間は困惑気味に口をパクパクと開いていたが、松蔭はどこ吹く風、視線をあらぬ方向に向けていた。

「別にあなたを否定しているわけではありませんので、誤解しないでください。霊には高圧的態度でのぞまないと取り込まれる危険性があるので口調が変わってしまうだけです。別に二重人格でもなんでもありません」

後、エスパーでもありません。松蔭は言い、溜息を吐いた。

「松蔭君…」
「なんですか、副会長。必要以上に僕からは壽君に関わりませんからご安心ください。ただ、彼から関わってこられた場合は別です。後ろのが近付けてくれないのが一番いいんですけど、ね。ああ、そうか…後ろのに頼んでおけばいいのか。いや、守護霊はそもそも見守るだけのものだしな………」

笑いながら答えた後、ぶつぶつと独りごちる松蔭に少しばかりの恐怖を抱きながら、風間は言った。心なしか身に纏う空気が変わっている気もしたが、松蔭には関係ない。

「ま、これからよろしく。風間壽君」
「!!!!!!!よろしく!!!!!!」

2011.09.25
(ところで、松蔭君、僕の名前分かる?)
(副会長は副会長としてしかにんし………楠原アタル、でしたっけ)
(!!!!!出来たら名前で呼んでほしいな)
(楠原先輩、そろそろ戻った方がいいのでは?)
(あ………)
(公の場では会いに来ないでくださいよ。絶対に)
(ぅ……わかった…じゃあね)
(………………………)
(何ですか、壽君)
(なんかずるい)
(はい?)
(俺!まつの下の名前、呼んでもいい人になれるように、がんばる!!)
(…………?お好きにどうぞ)

/おちなどない\


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