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04

最近おかしい。友人にそう言われ、確かにその通りかもしれない。と思った。
気が付けば“誰か”の事を考えている。
其れが誰なのかは分からない。

「………いや、違う」

分からない、ではない。思い出そうとしていないのだと、思ってみたところで“ソレ”に関する事柄だけは、どうしても完璧に、思い出すことは出来なかった。
そろそろ諦めたらどうだ。と、声がする。
誰が諦めるか、と答えれば、相手がそれを望んでいなくても思い出すつもりなのか。と、声がした。

「―――なお」

不意に思い浮かんだ名前を呟けば、それは嫌に馴染みがあった。
始まりを思い出せ、終わりを思い出せ。
自分自身に言い聞かせて、自分自身の記憶を取り戻そうとした。

「直哉」

一つ思い出してしまえば、不思議なことに後は、簡単に思い出すことが出来る。

―――――馬鹿だなぁ。

これで、最初からまた、やり直しだ。繰り返しだ。と、頭の中で、嗤い声がした。

2012.05.21


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