03
辺り一面、灰色だった。
『
君が幸せなら、それでいい』
「じゃあ、どうしてそんな顔、してるんだ」
『
どうしてだろう?だけど、僕はこれで満足している』
聞いた瞬間、なんて独りよがりなんだとそんなことを思った。
此方の感情も何もかもは置き去りで、ある意味自分本位に事を進めてしまっている。
“繰り返している”
不思議なことに、そう思った瞬間胸の中にストン、と何かが落ちてきた。
それはもしかしたら諦めだったのかもしれない。
喪ってしまった過去と、喪われてしまった未来に対する。
「………また、か」
少しずつ、夢の内容が変わってきているように感じた。
思い出そうとしても思い出せないことは分かっている。
ただ、確かに夢の中で“誰か”に恋い焦がれ、結ばれ、引き裂かれていた。
「思い出してやろーじゃん」
思い出せると言う確証も、何かを忘れていると言う事実もないのに、一体何を考えているのだろうか、自分は。
そんな事を考えていれば、空気が震えた。
(―――ああ、なるほど)
きっと、相手は“彼”が関わったからこそ、その道を選んでしまった。
「俺は恨むよ」
空気が震えたことによって自分は確実に何かを忘れているという事を、思い出してしまった。
それなら、思い出すしかない。
思い出した先に、たとえ納得できない真実があったとしても。
2012.05.15