other | ナノ


other ≫ box

どうしたらいいのでしょうか

※転入生と屋上の主


諸々の事情で途中から行くことになった学園で、何故かボクは気に入られてしまいました。なにゆえ?此処なら、此処でなら静かに暮らせると思ったのに。何事もなく平穏無事に学業に専念できると思ったのに。ここは進学校ではなかったのですか?違ったんですか?

「空が青いですねー」

人気者たちから追い掛け回され、親衛隊に目を付けられ、どうにかして逃げ出して過ごす日々が続いています。同室者には迷惑をかけられないから、転入当日に学園に関しての説明を受けた後、必要以上に関わらないようにすると言っておきました。そうしたらあからさまにホッとしていたから、きっと多分、親衛隊というのは怖いものなんだと思います。逃げ足の速いボクは呼び出されても何されてもずっと逃げているから分かりませんが。そして今日も今日とて授業も何もせずに僕の前に現れた生徒会の皆様には仕事を片づけてから来てください。無責任な人は嫌いです。と、言い捨てて脱兎のごとく逃げ出してきました。僕が逃げ出した後、クラスメイトが僕の事を少しだけ認めてくれた事実なんて、知りようもありません。
たぶん、いえ、確実にボクは逃亡癖がついています。いつまでたっても、どこにいたって、どうしてもいじめられる運命からは逃れられないようです。

「はあ、哀しい運命ですね」
「何をしている」
「ぴゃっ!?」

突然声が聴こえたかと思うと、燃えるような赤い髪とどこまでも深い黒い瞳をした人がいました。生徒でしょうか。制服を着ているので、多分そうだと思います。必死に誰なのかを思い出そうとしましたが、生憎と思い出せませんでした。彼の事は誰も教えてくれなかったはずです。同室者は部屋では僕と話をしてくれるので、要注意人物や危険人物についての情報を教えてくれるのですが、この人のことは話に上がっていなかった気がします。ここで一つ。生徒会の皆様は同室者のことを敵視していましたが、互いに興味がないという言葉を言い合えば、どこか疑いながらも納得してくれたようで、部屋にも一度上り込んだきり、来ていません。僕が拒否したというのもあると思いますが、プライバシーの侵害です!訴えますよ!!それ以上に礼儀がなってなくて常識もない人は嫌いです!!大嫌いです!!!と、部屋に無断で上り込まれていた時に柄にもなく大声で怒鳴ってしまったことが効いたのだと思います。そのせいで親衛隊ににらまれることになりましたが、結果オーライです。僕と同室者の部屋は今のところ、安全なのです。と、話がそれましたが、とりあえず目の前の人には謝っておけばいいのでしょうか。

「す、みません…あの、えと、すぐ、行きます。ごめんなさい」

嗚呼、きっと多分、これからまた、授業が始まる直前まで追い掛け回されるのでしょう。そう思うとちょっと、いえ、かなり気持ちが折れます。さっさと退散しましょう。痛いのは嫌いです。と、思って逃げようと足を踏み出したら、腕を引っ張られました。なにゆえ?

「おまえ……」
「???」
「珀斗、か」
「!!!!!!!!!!」

なんでなんでなんでなんで、その名前を知っているのでしょうか、どうしてどうしてどうしてどうして、呼ばれた瞬間、僕は泣きそうになりました。ただでさえ泣きそうなのに、これ以上ないほど、うろたえてはいけないと思いながらもうろたえてしまいました。その動揺を肯定と受け取ったのか、赤い髪の彼は何故か頬を緩めました。なにゆえ。

「―――――――楼、」

と言えば、思い出すか?と言われ、僕は記憶の糸を手繰り寄せます。どうにもこうにも思い出せずに、首をひねっていれば、噂は本当だったのか。と、彼が納得したように呟きました。

「えぇ、と……」
「ま、いいか」

忘れているなら一からやり直すまで。
言われていることが理解できません。どうしたらいいのでしょうか。困惑気味に言えば、俺の名前は鰐渕楼だ。と言われ、とりあえず僕は、白鷺珀斗です。と名乗っておくことにしました。
嗚呼、もう、本当にどうしたらいいのでしょうか。もういっそのこと、僕は退学したい気分です。

2011.09.14
補足*
鰐渕楼(わにぶちろう)→不良っぽい。多分。珀斗の知り合いっぽい。
白鷺珀斗(しらさぎはくと)→転入生。結構大人しいけど言う事は言う。逃げ足が速い。諸事情で一部記憶喪失。鰐渕くんには名乗ってしまったけど転入してからというもの諸事情で基本的に偽名を使ってます。


copyright (c) 20100210~ km
all rights reserved.
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -