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ごーいんぐまいうぇい.01

※我が道を行く同室者と転入生


『王道転入生』と、いう者が来た。美形が周りに群がっているから、おそらくそうだろう。
腐男子の友人曰く、美形共を虜にするだけする存在らしい。同室者に受けフラグが立つ場合もあるが、そのまま苛め抜かれて自殺したりなんなりしてしまう者もいるという話を聞いた俺は、どうするべきか。と、眉を寄せた。
どうにもこうにも、その『王道転入生』は俺の同室者なのである。

「俺の名前は橋本未空!未空って呼んでくれよな!!祥平!」

いきなり名前呼びか、とは突っ込まない。面倒すぎる。面倒すぎてシカトしていれば何故か周りにいる奴らに睨まれた。

「あ……生徒会?か……」

どうりで美形ばかりだ。と、一人納得していれば転入生が騒ぎ出した。周りの美形は眉を寄せている。訳が分からない。困っているのはこちらの方だ。

「さつまいもきんとんにしよう……」

なんでさっきから無視するんだよ、とか転入生が喚き、それに美形の睨みなどがついてくるが、俺からしてみれば面倒すぎて話をしたくもない。それなりに腕もたつので、さっきから送られてきている殺気を含んだ視線は当然のごとく受け流し、何故か掴みかかってきたヤツを軽く後ろの方に放り(そうしたらなぜかまた転入生が騒ぎ出したが、そんなことは知らない。第一、友達じゃねーし)キッチンへ向かう。転入生も向かってきたが、知るか。俺には重要な任務がある。

「さつまいも?じゃがいも??さといも???」
「おい」
「きんとんとんとんきぃん」
「おい」
「きんとんってどんな意味だったっけ」
「おい!」

ぐるん。効果音で言うなら、そんな感じ。一人でぶつぶつ言いながら芋を洗ってたら体を掴まれた。地味に痛い。とっさの事で対応しなかったのが敗因。それもこれも俺がめんどくさがっているからだと、解っている。

「えーと、どちらさま?」
「は?」

俺の問いに不思議顔の美形。間抜け面の美形はなかなか面白いですね。ていうかホント誰。俺、何も知らないんだけど。あ、一つだけやっておかなきゃいけないこと、思い出した。

「お、まえ」
「はいはい、ちょっと失礼ー」
「ま、」

なんか止められた気がするけど俺知らね。そんなことより重要任務。どうやら腐男子友達情報によると、王道転入生は必ず変装しているらしい。んで、その下には美形に類される綺麗な顔があるんだとかないんだとか。あ。芋洗ってから手、ふいてないや。まあいいか。

「転入生君」
「なんだよっ!あっ!祥平!!未空で良いって言った、ろ!?」

名前で呼ばれるのはどうでもいいけどそれ以外はいただけない。だってそんな、顔隠してた方が逆に危険だし。この学園。そう思って俺は一思いに転入生の頭から鬘と思われる黒色のもっさりした塊を引っ張りました。そんでもってついでに黒縁ビン底眼鏡もとってやった。まあ、結果として腐男子最強。言われてた通りでアンビリバボー

「うん。これで、よし」

これは捨てればいいか。と、ダストボックスに向かって放る。ナイッシュー。さすが俺。素晴らしい。

「あなた、何を、」
「………………へん、そ…う?」
「なにすん「「かわいいーっ!!!」」だ、ちょ、!?」

誰が誰だかわかんないけどとりあえず、俺がこれでよし。と、言ったら呆然とした表情で腹黒っぽい美形に見つめられ、口下手そうな美形は俺の手元にある便底眼鏡に目がいっている。ああ、これも捨てなきゃな。廃棄廃棄。双子は転入生の言葉を遮って、転入生に飛びついたまま。なんだかおもしろい風景だ。関わり合いになりたくないけど。

「そっちのが、安気」

うん、満足。だってやっぱり、黒いまりもみたいなのが部屋の中に居たら嫌だし。と、思ってたらなぜか不思議そうな表情で全員から見られている。なにごと。

「あ、芋洗ってる途中だった」

さつまいもきんとんーいもきんとんーじゃがいもきんとんくりきんとんー。なかなか愉快に思いながらそう歌っていた俺を、その場にいる全員が変な目で見てることなんて、俺が知るはずなかった。

2011.09.08
補足*
王道転入生→橋本未空(はしもとみく)
その同室者→来栖祥平(くするしょうへい)


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