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結局自分が一番大事

※秀と太郎


「好きになっちゃったみたい」
「へぇ」
「誰の事を好きなのか、聞いてこねーの?」

そんなの、聞かなくても知っている。秀は思いながら、あの女、好きと気になるが違うって言ったけどコイツ(太朗)にとってみたら気になったらその先、好きになるしかねーんだよ。と、毒吐いた。

「聞いてほしいんだ?」
「おー」

自分が好きな人は太郎で、その太郎は別の人が好きであることを、秀は知っている。
この気持ちがばれてしまった方が楽になるかもしれない。そう考えたこともあったが、友人の立ち位置すら危うくなってしまうと考えると容易に告げることも出来ず、ただ、傍にい続けている。

(嗚呼、好きだ、)

気付かなくてもいいと思っている。気付いてほしくないとも。それでもやはり、好きだと言う気持ちだけは消すことが出来ず、常にその気持ちを持て余している。ズキリ、と、自分のどこかが痛んでいる現実をどうにかして、忘れようと、している。

「知ってるし」
「え!?」
「見てれば、分かる」

慌てている太朗をしり目に、秀は思う。

(だけど残念だな、あの娘はお前の事なんかみちゃいねぇ。眼中に、ない)

その言葉を告げこそしなかったものの、心の中で笑いながら。

(あーあ、憂鬱。って、アイツが移ったか…?)

憂鬱だ。と、いうのは淡島の常套句だ。

「秀?」
「なんでもねー。応援してるし」
「…!おう!」

思ってもない事を言い放ち、男が女を好きになり、女が男を好きになるというのは、誰が決めたんだろうか。と。そんなことを思いながら秀は、それでも、太郎の思い人が太郎の事を好きになることはない事実を知っているために、少しだけ気持ちが浮上するのを感じていた。

2012.01.04
加筆修正 2013.12.11
(俺ってサイテー)

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