不適切な言葉達
※(会長→)無気力(?)と転入生
言葉の持つ意味を正確に知らないから、そんな事を言えるのだろう。
そんなことを思いながら彼を見つめた。彼の口から出てくる言葉に、いちいち反論する気も起きない。反論したところで彼は、自分は正しいと、自分こそが正しいのだと、そう言うことだろう。いくらこちらが正しい意味合いで言葉を使っていたところで、そんなものは屁理屈だ。そう、主張するだろう。
これまで彼を観察してきたからこそ、分かる。本当に、どうしようもない。彼の言い分を聞いているうちに、吐き気すらしてきた。
(と、いうか彼を観察していたのがそもそもの間違いだった)
今思えば何故自分が彼に興味を少しでも持っていたのかが分からない。
「謝れよ!!」
嗚呼、なんて理不尽なんだろう。
「じゃあ言うけどー…」
自慢じゃないが、僕の沸点は割と低い。
「……やっぱやめた」
沸点は低い。が、それ以上に面倒だと思う気持ちが勝ってしまうと途端、やる気を失ってしまう。ちなみに、これに似た状態がテスト開始直前に来ると厄介だ。直前までやる気があったのに、突然やる気がなくなる。そうした時は決まって赤点組になる。逆に調子がいい時は割と上位に入る。
(あー、だからか)
お蔭で割とよく赤点組になるが、付き合いの長い先生はそれがこの性格から来るものだと分かっているため補習に遅刻したりしても軽い注意くらいで済む。逆に良い成績を取った時は今回は悪癖がでなかったのか。と、言われる程だ。今回のテストはいつもの逆パターンで、調子が良かった為に割と上位、と、言うか生徒会の成績トップ組が転入生に現を抜かしていたために首席になってしまった。その為、事もあろうにカンニングの疑いをかけられている。
(一位を取ってしまった僕が認めない限りは引き下がらないって事か)
だからと言って、教師は僕がカンニングを出来るわけがないと知っている。初等部の時から続く僕の悪癖(保険医は突発型無気力症候群とか言ってた)の為に、僕はテストの時は何も持たずに出向く。何も持たずに自分の席に座って、担当の教師からシャーペンと消しゴムとシャー芯を受け取る。担当の先生の中には仲が良い人もいるものの、基本的にそんなにかかわりがない人がくる。だから、カンニングできるはずがない。
「は!?」
カンニング、出来るはずがないという事を教師もクラスメイトも知っているのに、初等部から一緒のメンバーは知っているはずなのに。
「めんどくさい。君、すっごくめんどくさい」
「なっ!めんどうってひど「面倒は面倒なんだから面倒って言って何が悪いの?僕がカンニングしてないことなんて、クラスメイト全員知ってることなんだけど?じゃあ逆に訊くけど、テストの時手ぶらできてんのにどうやってカンニングできるんだよ。教師から借りるシャーペンにでも答えが書かれてるとか?んなばかな。そんなん書かれててもメンドクサクテ読む気起きないよ。自分で答え書きこんだ方がはやいし。バカじゃないの。ていうか特待枠で入ってきたにしては君、馬鹿だよね。なんで補習組にいるの?もしかして裏口?」っ、〜〜〜っ、、」
「え、マジで裏口?」
「〜〜〜〜っ、う、うるさいっ!うるさいうるさいうるさいっ!」
おさまったはずのものが復活してしまったために、珍しくも、本当に珍しくも捲し立てる様にマシンガントークで言い切った後、案の定彼の大声の逆襲にあい、耳が痛くなる。
「君が裏口でもなんでもいいけど、ありもしないことをさもあるかのような調子で勝手に語らないでよ」
一通り理解できない内容を言った後、ショックを受けている様子の彼を置き去りにその場を後にすれば、生徒会メンバーが駆け寄っていった。すれ違いざまに、睨まれたものの、特に何も言われない。彼等は知っているのだから、当然と言えば当然だ。不思議なことに、会長には笑みを向けられた。
「次は、負けねぇ」
ああ、そう言えば彼だけは、転入生に現を抜かしていると見せかけてうまく立ち回っていた。
「……………」
ただ、面倒になったためその言葉には頷き、笑みを浮かべるだけにとどめた。とどめたはずだった。
「………会長、」
「ん?」
「無理、しないでくださいね」
そのまま転入生の元に行こうとした彼に声をかけて、柄にもない事をしてしまったと思いながら、今度こそ本当にその場を後にした。
「あれは、反則だろ……」
僕がいなくなった後、会長がそんなことを言っていたなんて、さっさとその場を後にしてしまった僕が知るはずもなかった。
2012.03.13
加筆修正 2012.10.16
*病名は超適当です。フィクションです。空想の上に妄想です。