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ハロー、しにがみ。

この世界はきっと何でもありなんだ。そうに違いない。そう思いながら、目の前に現れたモノを見た。
死神だと言ったソレは、どう見ても、石に見えた。たとえ百歩譲ったところで、石以外には見えない。
思わず、ロウの名前を叫びながら家の中に入り、飛びついてしまったあたり、大分心を許してしまっているとか考えながら、それでも石に見える死神は意味が分からないからこそ恐ろしいと思っていれば、頭上から忍び笑いが聞こえた。

「………ロウ」

心の中では呼び捨てだったけどなんとなく、呼ぶときはちゃんとさん付けをしていたのだけど、先日呼びやすいように呼べと言われてからは、さん付けすることをやめてしまった。いい傾向だねとサクラさんには笑われてしまっている。
何がいい傾向なのだとは怖くて、聞けない。聞いたら取り返しのつかないことになりそうな気しか、しない。

「―――もうそんな時期か」

それ、この前も聞いた気がする。
そんなことを思っていれば、普通に、本当に普通にこれっぽっちも異常なんかありませんと言わんばかりに、ロウは石と話をしていた。

いつもの場所に置いてある。
今年は少し多いくらいだ。
出来も良い。

ロウの言葉を聞いた石は飛び跳ねる。跳ねているのに何故か、床に傷がついていない。そこで、恐ろしいことに気付いてしまった。

「う、浮いてるー!???!???!??」

気付いてしまった瞬間に叫んでしまった俺は、悪くない。悪くない、と、思いたい。たとえロウに飛びついた後即座に彼の後ろに回って、怖いもの見たさ精神を働かせてそれでも怖いから、彼の服を握りしめながら顔だけ、俺のことを追いかけてきた石があるところを見ていたところで、悪くない。

「死神だからな」
「え、な、死神だと浮くの?なんで?そもそもなんで石が死神?え?だって石だよ?」
「ああ、なるほど」

あちらの石に見えてしまっていても仕方のないことだ。

そう言ったロウに、何が、いったい何が仕方のないことなのだと聞こうとして、やめた。いろいろと不可解なことが多いことは此処二週間弱で分かっていたはずだ。今更、全ては今更過ぎる話だ。俺が元の場所に戻れないと繰り返し言われる事も、理解できないはずのことを受け入れつつあることも。すべて。

「……つまり、石ではない、と?」
「死神はお前のいた世界でいうところのショタという姿だ」
「は?」

いや、ショタはわかる。わかるけどなぜその言葉をチョイスした?そんなことを思いながら、何故俺には石に見えるんだと考えていれば、これもそのうちと返される。どうやら、死神の真の姿は俺がこの世界のことを心の底から受け入れた時にならないと見れないらしい。なんだそれ。きっと死ぬまで見れない。そんなことを思っていれば、口に出ていたのかもしれない。ここにきてまた、衝撃の事実。

「死なないぞ?」
「え?」
「お前は死なない」
「は?」

なんて?もう一回言って?どういうこと???俺がこの世界を受け入れたら全部話すとかそしたらもう一生聞けないんじゃないのか???そもそも死なないってことは俺には一生という終わりが????????

もともと頭の出来が良くない俺は、そこで考えることを、やめた。

「サクラさんんんんんんんんんんんんんんん!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

唯一の良心と思わしきサクラさんがいるはずの畑に向かって、叫びながら走り出した。
だから俺は、その後ロウと死神が交わしていた内容なんて、これっぽっちも知るはずがないのだけど。後々、その場に残って聞いておけばよかったと思うのは、大分時が過ぎてからの話。

2018.10.12


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