石英は呼吸する
楽しそうな表情を見れたのは、久しぶりだと、天岸は思う。
「はしゃぎすぎないでくださいね」
学園の外に出たところで、交わされた約束の効力はなくなることがない。
それも卒業までだと思えば、互いに、我慢は、ギリギリ出来る。
冬獅郎の弟は、怖いと思いながらも、致し方なしとあきらめているところが、天岸にはある。
申し訳なさそうにしながらもうれしそうな冬獅郎を見てしまえば、天岸は自分に課せられたことは、時期がくるまで我慢すればいいことだと、思いなおす。
「うん」
お前と一緒にいるだけで、息をすることが簡単にできるようになると言われてしまえば、現状は彼にとってあまりよくはないものなのだと、思う。
それでも、自分がどうにかできるものではない。
天岸はせめて、彼が呼吸がしやすいようにと、休日に思考をこらす。
「 」
呼ばれて、笑みを返して、彼が、呼吸できていることを見て、天岸は、笑みを深めた。
2018.07.16