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その後

※脇役平凡→風紀委員長


まさか、屋上で風紀委員長と会うとは、思わなかった。
まだ少しだけ緊張している気がする。

そう考えながら、風紀委員長が出て行った扉を、見つめる。

これまでも何度か、屋上に逃げ込みに来たことはあった。
それでも、風紀委員長と会ったのは、今回が初めてだった。

(ありがとうマリモ…)

逃げ込む理由がなければ、自分は屋上に来ることはなく、風紀委員長と会えることもなかった。
そう思うと、いつも追い掛け回してくる編入生のこともありがたく思える。
風紀委員にでも入らない限り、風紀委員長と二人きりで会うことは出来ない。
親衛隊を作っていいことになっている生徒会役員たちと違って、風紀委員会に所属する人たちの親衛隊は、作ってはいけないことになっている。
それでも、親衛隊を作りたいと思っている人たちはいて、非公式に親衛隊のような存在を作っている人たちもいる。
きっと、見つかってしまえばそれまでのその団体には、所属していないし、これからもその予定はない。

「……もう少ししたら、戻ろう」

風紀委員長は優しいと、噂には聞いていた。
編入生から逃げていると聞いて、屋上の鍵を掛けていってくれたあたり、その噂は本当なのだろう。
もしも、鍵を開けたまま行かれてしまったら自分でかけなおすつもりではあった。

「ああー…好き」

思わず、言ってしまっていたのは、仕方のないことだと思う。
まるでそれを聞いていたかのように、手に持っていたスマホが鳴った。

「………戻るか」

編入生はスマホを持っているにもかかわらず、あまり使わない。
スマホを使ってきたら、逃げることをやめて戻らないと大変なことになる。
一度それをした時には心底面倒なことになった。
生徒会役員たちとの関係性が若干良くなっているとはいえ、面倒なことには変わりない。
編入生も生徒会役員も、よく、茶番ともいえる行動を続けられるものだと思う。
きっと風紀委員会がどれだけ頑張っているかも、知ってはいても理解はしていないはずだ。

考えながら、屋上を後にして、たぶん、見つかりやすい場所を歩いていれば、程なくして喧騒が近付いてきた。

「あ!!!やっと見つけた!どこ行ってたんだよ!」
「ちょっとそこまで」
「そこまででなんで俺がこんなに探す羽目になるんだよ!!」
「さぁ?」

このやり取りも、何回目だろうか。
最初のうちは涙目の編入生を見てか殺気立っていた生徒役員も、殺気立つことはなくなった。
それだけ、回数を重ねていることには、なる。

「ん?なんか機嫌良い?」

どうやら、風紀委員長に会えた嬉しさが漏れてしまっていたらしい。
嘘を吐くわけにもいかず(コイツは何故か、嘘を見抜く才能を持っている)素直に答えれば、どうしてなんでと、質問攻めにあう羽目になった。

「好きな人に会えたから」

本当は、言いたくなかったけれど、仕方がない。

「え!??!?好きな人いたのか!?誰だ!?!??」
「ヒミツ。君ではないから安心してくれていいよ」
「なあ、誰!?ていうかおれじゃないからってなんだよ!?」

いやだって、そう言っておかないと生徒会役員様方の心中が穏やかではなくなってしまうから。
でも、だからといって、自分の好きな人が風紀委員長であるとは、言わないし、言えない。
ただでさえ、お前みたいな平凡が、とか、編入生の魅力がわからないなんて、とか、言われているのだから、風紀委員長のことが好きだとばれた時にはそれこそ、何を言われるかわかったもんじゃない。
それに、こいつらに下手に、興味を持たれても、困ってしまう。

「なぁなぁ!誰のことがすきなんだよ!?」
「……よーむいんのおじいちゃん」
「!??!???!?」

致し方なしに言えば、いつもは嘘を見抜く編入生は、珍しく、信じていた。
風紀委員長を思い浮かべながら口にしたからかもしれないけれど。

(また会いたいなあ)

もし、また会えたなら、その時はもっとちゃんと、話をしてみたい。
どうか、迷惑だとは思われませんように。

用務員のおじいちゃんはレアキャラだし、そうなのか?いや、ていうかなんでおじいちゃん?おれのほうがよくない?
そんなことを呟いていた編入生と、途端に殺気立った生徒会役員に、勘弁してくれと思いながら、面倒な状況をどうにかするために、口を開いた。

2018.03.06


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