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other ≫ 斬り取り戦

2

ノックの後に入るぞ、と続け、風紀委員長は扉を開けた。
足を踏み入れた瞬間、机の上に顔を伏せている誰かを見つけ、息を吐く。

「―――――やはりな」

そう呟き、風紀委員長はコンパスの長い足で速やかに机に近付き、彼の肩を叩いた。

「鵜飼、起きろ。眠るならベッドで眠れ」
「―――――――――ん、ぅ」
「鵜飼航。眠るならベッドで」
「………るせぇ」

わお。生徒会長はなんという可愛らしい声をお出しになるのでしょうか。あの、俺様と名高き生徒会長が!
そんなことを考えていれば、目が覚めたのか体を起こし、目元を押さえている。
鵜飼航。それがこの学園の生徒をまとめる役を得た、生徒会会長の名だ。

「あ?あー、おまえか」
「ああ、僕だ。ところで鵜飼、他の者は?」
「マリモにかかりっきりだ」

そう言いながら、会長は山積みになっている書類を手に取り、目を通し始めた。
風紀委員長はそれを見て、急に騒がしくなってきた方向に目をやる。

「鵜飼。僕は捕まりたくない。と、言うわけで逃げるぞ」
「ああ。その方がいい。お前は逃げろ」
「鵜飼」
「なんだ」
「無理そうになったら言え。お前になら協力は惜しまない。後、今度親衛隊の子たちと話し合いの場でも設けてやってくれ。不安ならうちの者を数名貸す」
「……………わかった。かりなければどうにもならないとおもうから、かりることになるとはおもう」

そんなやりとりをした後、風紀委員長は生徒会室の窓の一つを開き、身を乗り出すと姿を消した。かと思えば、頭だけひょっこりとだし、珍しくもいい笑顔を浮かべていた。

「浅間君!君は転入生と少し話してから戻ってきてくれ」
「ちょ、そんないいんちょ「よろしく頼んだ!」いいんちょあああああああああ」

僕の叫びもむなしく、風紀委員長の姿は見えなくなってしまう。どこをどう行ったのか、今さっき窓の外に出たはずの彼の姿は、とっくに見えなくなってしまっていた。

書類が飛んでしまっては大変だと思い、窓を閉め溜息を吐いていれば、会長に憐憫を含んだ視線を向けらていたことに気付く。
不本意だ。とてもとても、不本意だ。

「………そんな目で見ないでください。いいんです、いいんですよ。僕、風紀委員長のこと大好きですから。喜んで犠牲になります。ええ、犠牲になりますとも」
「大変だな」
「いいえ。僕等にとって風紀委員長に使ってもらえるのは幸せなことですから。いいんです。いいんですけど、あのマリモが風紀委員長に会ってしまってもしも恋をしてしまったらと思うと!!」

はらわたがにえくりかえりそうなおもいです。
ソウ言えば、会長はそうだな。と、頷いた。
もしかして、もしかしなくとも。転入生に心を射止められずに仕事をしている会長は、風紀委員長のことを好きなのかもしれない。

「わっ渡しませんよ!?」
「………そもそも誰のものでもないだろう、アイツは」
「そ、それはそうですけど!!」

安心しろ。今はそれどころではないしな。
ソウ言われた僕は、それが良いのか悪いのかよく分からなかった。が、何にしても、これから風紀委員長と転入生が関わり合いにならずに済む。と言う事は有り得ないのだ。有り得ない事だけは、よく分かっていた。

「…………会長」
「あの、馬鹿!!」

其れが聴こえてきた瞬間、会長は立ち上がり、書類もそのままに生徒会室を走り去っていった。それをみた僕も後に続いた。が、運動音痴ともいえる僕は会長の様に颯爽と走ることも出来ず、のろのろと道を進み、ようやくたどり着いたときには何故か、会長除く生徒会役員が土下座し、それを見た転入生が喚いていた。



re 2018.02.19


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