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やさしくしたいよ

きっと、ずっと、甘えてしまっていた。
謝ればどうにかなると、赦して貰える物だと、思っていた。
それが当然のことであると、思い込んでいた。

「ンだよその思い込みは」

呆れたように言った天岸に、生徒会会長である三ヶ津龍路は自嘲的な笑みを浮かべ、息を吐いた。

「―――――ハ、…本当に、な」

現在、生徒会役員は全員謹慎処分を受けている。
授業を受けず、生徒会役員の仕事もしていなかった上に問題を起こしてしまったのだから、当然といえば当然のことかもしれない。
失われてしまった信頼と信用は、きっともう元には戻らないが、せめて引き継ぎが終わるまでは心を入れ替えてすべてのことに取り組もうと思っている。
そう言えば、教師には「他の奴らもお前みたいだったらよかったんだけどな」と呟かれた。
つまり、他の役員は謹慎を不相応のものであるとしているのだろう。

他の生徒たちとは接触することができないが、どういうわけか天岸とだけは会うことができている。
こうして、学園の状況を知れているのは嫌々ながらでも天岸が会いに来てくれているからであり、それに関しては、ありがたく思っている。

「まあ、お前はやり直せるんじゃねぇの」
「……そうかな。そうだと、いいけど」

こんなにあっけなく、壊れてしまうものだったのだろうかと思う反面、今までちゃんと向き合ってこなかったからこその現状だと、受け入れている自分がいた。

「……富貴は?」
「別に。いつも通り」

学園の行事を回していく役目はそのほとんどが生徒会に委ねられているために、大元が機能していなければ、風紀委員会は意味を持たない。
そのことすら、意識の外に置いていた三ヶ津は、今更ながらに、思い出す。

―――幼馴染だからといって、

その後に告げられた言葉は、胸を抉った。
最もだと思う。いつまでも、

「そっか」

生徒会と風紀委員会は決して、仲が悪いわけではなかった。
少なくとも、編入生が訪れるまではそれなりに協力して、学園を治めていた。
全て編入生の所為にするつもりはないが、それでも、その一因が彼にあったのは、確かなことだと、誰もが思っている。

「光は…」
「説明してもわかんねーみてぇだな、アイツは。謹慎からそのまま、ってのもありえんじゃねぇの」
「……、」
「頼まれたから来ただけであって、俺はアンタたちが冬にしたこと、許してねぇから」

天岸の言葉に、三ヶ津は俯く。

「―――優しくねぇな」
「やさしくしたいよ」

でもそれは、冬獅郎アイツに対してだけだ。

「……そういうやつだったな、お前は」
「それに、お前だって俺に対しては優しくないだろ」

言いたくないことを言ったといわんばかりの表情をしながらの天岸のその言葉に、三ヶ津はもっともだと、苦笑した。

2018.02.10


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