誤算
※親衛隊総隊長*風紀委員長
全くどうして、このような事になってしまったのか。
何が楽しいのか自分の膝枕で眠っている親衛隊隊長の姿を見ながら、そう思う。新学期になってからというもの、きっかけは分からないが、荒れかけた親衛隊を落ち着かせた親衛隊総隊長は、何を思ったのか自分に付き合えという要求をしてきた。風紀委員会に所属している生徒には親衛隊が出来ることはない。それが非公認であったとしても、そうでなかったとしても認められていないために例え水面下で動いていたとしても解散させている。それに加えて、生徒会役員の親衛隊に所属している生徒たちは風紀委員会に所属している者を嫌っているはずだった。そう、“はずだった”のだ。
「―――誤算だ」
机の上の書類を片付けながら呟けば、それは仕方ないっすよ。と声が飛んできた。更にその後に続けられた言葉に、ジロリ。と、睨み付ければおっかない。さーっせんした!と、謝りその場からいなくなってしまう。謝るくらいなら初めからやらなければいいのに、完全に遊ばれている。と、思っていたからか、知らず、溜息を吐いていた。
「幸せが逃げるぞ、圭」
いつの間に起きていたのか、膝が軽くなったと思えば彼が起き上がっていた。
「………そうかもな」
先程、そんなかわいい子の事掘れるんだからいいじゃないっすか。と、からかいを込めた様な声で言われたが、それは逆だ。何をどう間違ったのか、体格も力も勝っているはずの俺の方が組み敷かれている。残念なことに、総隊長という役目を追う前からネコを被っていたらしいこの男は、俺と二人きりになると必ず本性を現す。最初に見破ることが出来なかった自分が悪いのだろう。諦める事に決めたのは、記憶に新しい。
「ところで」
今日はまだ、我慢できそうなのか?にやり。と、笑いながら問われ、当然だ。と、答えた。残念な賭けをしている以上、その賭けに負けるわけにはいかない。何せ、自分の未来がかかっている。今日ばかりは、呑まれるわけにはいかなかった。
「ふぅん」
つまんねーの。と、言ったかと思えば可愛らしい顔をした獰猛な男は唇に噛み付いてきた。いつも思うが、これはキスとはかけ離れているように思える。一歩間違えば、喰われてしまう勢いを持っている。ま、いっか。と、言われ、その後に続けられた言葉に思わず、舌打ちをしていた。
2012.08.29
移動 2013.05.10