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どんがらがっしゃん

※きれたわけでもないけど結果的にきれてる書記


それはちょっと違うんじゃ…ああ、これが見解の相違ってやつか。
そんなことを思いながら、いつものようにそれを眺めていた。が、ついに堪えきれなくなり、笑ってしまった。
毎日毎日、よくもまあ同じようなやりとりを繰り返すことが出来るものだ、まるで茶番。おままごとだと、そう思う。
いつも少しも笑わない僕の笑い声が響いたことに驚いたのか、生徒会室にいた面々は一斉に僕を見た。転入生は先程まで話していた事を忘れたのか、僕の方に近付いてきたが、正直気色悪い。容姿も態度もなにもかも。押しつけがましい性格も。

どんっ

突き飛ばそうと思ったわけでもないのに、転入生が飛んで彼の背中が壁に当たった。突き飛ばした、と、言うか、触れられそうになった瞬間蹴り飛ばした、が、正しい。僕の使ってる机ごと。ああ、でも別に僕がやったわけじゃない。

がんっ

体は、今、僕のものではないのだから。机のぶつかる音と転入生の呻く声が聞こえたものの、心配する義理もないのでそのまま放置して、机だけ元に戻し、席に着いた。
普段大人しい僕がそうしたことが理解できなかったのか、別の人たちがそうしたら即座に睨みつけてくる面々は、呆然と目を見開いている。

「ゆーく「仕事しないなら出てけ」ぇ…」

気付けば、僕の隣の席の会計の机をかち割っていた。
がらがらと音を発てて、机が粉々に砕ける。そう言えば、お前は時々馬鹿力を発揮するから加減というものを覚えなさい。と、師匠でもある祖父に言われていた。思い出したものの時すでに遅く、どうしたものかと自分の手と壊れてしまった机を交互に見比べてみたところで、結果は変わらなかった。

「……仕事しないならこんな机、要らないだろう?」

どうせ祖父に言われたこともすぐ忘れてしまうし、自分がこれから生徒会室を滅茶苦茶にすることも、事が済めば割とすぐに忘れてしまうのだろう。昔から、そうだ。その時は記憶がはっきりしているのに、すぎてしまえば薄い靄がかかったかのように明確には思い出せない。夢か現実か、区別するのが難しくなる。今はこんなに明確に鮮明に覚えているのに、不思議な話だ。普段は無口で口を開ければ片言くらいしか話せないのに、一度メーターが振り切れると笑いが止まらなくなり、饒舌になるって事を、会長は幼馴染だから知ってたはずだ。しかしながらどうやら、転入生に骨抜きにされてしまったために忘れていたらしい。いつだったかお前だけは怒らせないようにする。と、神妙に言っていた気がしたんだが。気のせいだったのかもしれない。嗚呼、転入生が来る、その前まではカリスマ性溢れる全校生徒の憧れの的だったのに、残念な話だ。

がっしゃん

そんな音がして、気付けば生徒会室のガラスを割っていた。

「おいっ」
「………やっべ、とまんね」
「優一!」
「はい、此処で問題。本来そんなに仕事がないはずの書記である僕が何故、授業にも出ず生徒会室にこもりっきり状態になっているのでしょーか」
「………」
「僕が有能で良かったね?咲。ところでお前、いつからそんな能無しになったんだ?これじゃあリコールされてもなにも言えないぞ」

まあもう手遅れかもな。そう言って、さっき蹴り飛ばされた衝撃か、未だに呻いている転入生に向かった。残念なことに生徒会メンバーは誰も、彼の心配をしていない。もしかしたら、それどころじゃないのかもしれない。多分、会長は僕の事を生徒会メンバーに話していたのだろう。プライバシー云々の問題は置いておくとして、それはある意味、正しい判断ともいえる。

「選んでもらおうか」

選択肢は、二つに一つ。僕の提示した条件を呑むか否か、少しだけ楽しみに思いながら静まり返った生徒会室の中で再度、口を開いた。

2011.12.02


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