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07 : 白昼夢
首を折る夢を見る。
男にしては細い首に両手を掛け、徐々に力を入れていく。甘んじてそれを受け入れている相手を見ながら、俺の両手の力は徐々に強まり、そうしてやがて酸欠状態に追い込み、絞め殺してしまう。殺されそうになっているにも関わらず、嗤っているその顔は酷く綺麗だった。ただ、声もなく嗤い、そうして絶える。その瞬間、何を思っているのかは分からない。分かるはずもなかった。
(―――おかしい)
自分がそんなことを考える事、それ自体が珍しい事だった。異常だとも言えた。常に理由もなく、殺し続けている自分がそんなことを考えることは、酷くおかしな事だった。それがたとえ、夢の中だったとしても。
(足りない、な)
首を折って殺すだけでは足りない。血を見たかった。今ならまだ間に合うと思いながら、鼓動を止めたばかりの其処にナイフを突き刺し、他の場所も裂いていく。赤色が酷く綺麗に映え、まるで赤い花の様に飛び散る。これを見た彼の仲間はきっと、躍起になって俺の事を探すだろう。もしかしたら、銃殺しようとすらするかもしれない。最も、俺の事を殺せるのは今殺したヤツしかいない。銃殺であれなんであれ、俺の事を殺せるのは。
「……い、おい」
「――――――――――あ?」
「そんなに気持ち良かったのか?」
珍しいな、お前がそうなるなんて。その言葉に、珍しくも自分が意識を飛ばしていた事を思い知った。
「奇壱」
「何」
「奇壱―――」
奇壱は気付いていて、知らない振りをしているのだと漠然とそう思う。きっと、その先の事にも気付いているのだろう。交わった場所が熱を持ち、酷く熱い。この行為をゆるしてくれているのは何故なのか、離れようにも離れられなくなってしまっている。殺すことはできない、ただ、サインを出すこと、それをも、止めることが出来ない。
「首を折る夢をみた」
「………俺のか?」
「そうだよ」
笑いながら言えば、呆れた様に見られた。いい加減抜け、と云われ、しぶしぶながら彼の中から出る。出る瞬間、彼から上がった声に誘発され、口付ければそれは更に深くなった。
「そう簡単に、」
続けられた言葉に、声を発てて笑えば頭を軽く殴られた。
2013.05.11