other ≫ Love to a trash box
05 : 偶発的
職業柄。そういったものには、敏感になってしまっている。自らが望もうと、そうでなくとも気付いてしまうことに変わりはない。
―――――パァン。
銃声の音が聞こえ、何事かと振り返ってはみたものの、自分以外に振り返っている者がいなかったためにそのまま家へ向かおうとした。そうして路地裏に差し掛かったところで、後ろに引っ張られ連れ込まれる。抵抗するまもなく唇を奪われたものの、それが誰であるかは分かっていた。目の前の男からは硝煙の薫りがする。
「―――――殺すのか?」
普段と異なる姿こそしているものの、きっと、目の前の男には自分が誰であるかが分かっているだろうと思いながら、そう尋ねれば、すん。と、嗅がれた後、なんでそんなかっこしてんの、きーち。と、尋ねられる。
「ヒミツ」
「……………なにそれ」
端正な顔が歪められ、納得できないとばかりに首筋に噛み付かれる。別にいいけど、手当はしなきゃいけないだろうな、面倒だ。と、思いながら(それは決して強がりなどではなかった)欲求不満なのかを尋ねれば、きーち、俺に飼われてみる?と、尋ねられた。それはそれで楽しめそうな気がしてしまう。と、思うあたり、もしかしなくとも自分は相当に、疲れている。そう感じながらも、首筋に出来上がった噛み跡を消毒するかのように舐めあげられ、思わず出そうになった声を堪えたまま、喉で笑った。
「どっちでもいい」
「えー…」
「殺人鬼との生活も、なかなか楽しそうだ」
「…………」
未だその手に握られていた銃口から火花が散り、銃声が鳴り響いたものの、結局それは自分ではなく別の何かに向けられたものだった。いっそのこと、殺してくれれば楽になれるのにと思わなくも、ない。が、それを目の前にいるこの男がすることがないことは、分かっていた。残念なことに、この男に自分を殺してもらおうなどと考えてはならない。
「飯、食ってくか?」
「うーん」
飯、も魅力的だけど、元がいい。そう言われ、とりあえずそれ、どうにかしたら窓からでもどっからでも家に来い。と、告げた。
2013.04.09