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萌葱色

2023/02/08
歌舞伎の定式幕で使われているである事は、知っていた。それ以外は、特に何も。

萌葱色

「そんなみられてもこまるんだけど」

萌葱色を好んで身に着けている言葉は、自分は別に歌舞伎には関係ないと笑う。
名前を聞いても、言葉通りに取る者は、そう少なくはないと、そんな事を思う。
ただ、知っている人は、知る人は、気付くだろう。気付いてしまう事だろう。
彼は、あまりにも似すぎている。
それこそ、今まで表だっていなかっただけで、隠し子であったと、言われたところで。

「…………、」

彼は、あまりにも、似すぎていた。
他人の空似と言ったところで、ごまかすことができないほどに、似通って、似すぎていた。
それでも、こうして今まで、かろうじて。

「……どうすんの」

問えば、彼はうっすらと笑む。
それすら、画面越しに見る人にとても良く似ていた。
どうしてこれほどまでに似てしまったのだろうと、彼は笑う。
それはもう、寂しそうに。

「どうもしないさ」

ながされるまま、どうにか、生きていく。母とも、そうしようという話を、した。

今まで通りとはいかないと彼は笑い、それもそうだとそう返す。

「………なあ、」

それでも。

その後に続けられた言葉に、情けない表情をした知り合いを、これ以上落ち込ませないために、その問いかけに対する答えなど、最初から、決まっていたのだった。




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