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白梅色

2023/02/04
綺麗だなあと、そう言った彼は、その時はきっと、自分が男である事には気付いていなかったのだろうと、そんな事を、考える。
気付いていても気付いていなくても、同じ言葉を言っていたと思うと、苦笑しながら答えたのは彼だった。
確かに、綺麗な女性だと思っていたと、答えたのも。

白梅色

「白梅なにしてんの」
「なにもなにも、課題片してるんだが?」

声を掛けられ、手元のレポートから声が聞こえた方向へ顔を上げる。
答えを返しながら、思った通りの人物がいた事で一瞬、息を止めてしまった。

彼は今回、一番初めの彼と同じ顔をしている。

「俺の顔になんかついてる?」
「や、今日もイケメンだと思って?」
「疑問形かよ」

笑いながら彼は、お隣失礼と言い、椅子に腰を下ろした。

「俺もそろそろやんないとなあ」
「今やったら」
「やる気が出ない」

ぼんやりと、過去世を思い出す。

気付けば何故か、いろいろと発展して便利な世界で生きていた。
そんでもってきっと、思い人は記憶も何もかも失ってこの便利な世界で生きている。
過去にした約束、それ以外も、もろもろ、すべて、忘れ去ったうえで。

(や、それが、ふつうだよなあ)

きっとすべてを覚えている自分がおかしいのだと、そんなことも、思う。
ただ、ほんの少しだけそのことを寂しく思う。

(あとなんでおれは毎回同じ顔なんだか)

おかげで今世では両親にDNA鑑定までさせてしまった。
いろいろな技術が発達していて良かった。
そうでなければ、初回と何とか血縁を感じる両親を持った以外の前世と同じ道を辿る羽目になっていたはずだ。

生まれで死んで、また生まれて。

一体、いつまで繰り返せばいいのだか。

どうやら同じ世界線であるからにして、唯一の救いはそこだろうか。
これで流行りの異世界転生とかであれば、きっと毎回早々に退場することを選んでいたはずだ。

隣の男が静かな事を良い事に、そんな事を考えながらもレポートに視線を戻し、手を動かす。

「白梅」
「何」
「お前、ほんとについてる?」
「………、何度目だよそれ」

ついてるがそれが。
やり取りが多すぎて最早何も感じなくなってしまった質問に、そう返した。




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