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亜麻色
2023/02/13
寒いと思いながらも、動くことは、出来なかった。
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亜麻色=
「で、なにしてたわけ」
聞かれて、答える事が出来ない。
逃げてきたのだと言えたら、どれだけ良かっただろうか。
そう言ったところで、もし、彼が自分の代わりに殺されなどしてしまえば。
それはもう、どうしようも、どうにも、ならない。
「……いいけどさぁ、」
春が来たら、どっか行ってほしい。
彼の言葉に、肯いた。
亜麻色の髪をした彼は、かつて、どこかで見たはずの肖像画の人物に、よく似ている。
それでも彼は、家名を名乗ってはいない。
名乗ることが、ない。
「…なに」
聞かれて、家族の事を尋ねれば彼は苦笑した。
―死んだ。
死んだのだと。
これ以上は何も聞けないと、助けを求める事も出来ないのだと思いながら、譲って貰った馬で、駆ける。
「いつか、」
いつか、迎えに来るとは言えなかった。
それでも、確かに、数日間、彼が守ってくれた自分を、国のために生かしたいと。
そう思った。