青い瞳は悲哀に濡れて
「貴方のことが気になるの。すごく」
「そうか。……俺の記憶が確かなら、初対面のはずだが」
「……貴方からは同類の匂いがするのよ。黒い髪に青い瞳だけれど」

 人じゃないでしょう。
 そう重ねて言われたときに、ああなるほどとレグルスは理解した。

 この国には『クルースニク』という存在がいる。「吸血鬼を狩ること」を生まれながらに定められた者たちの総称だ。
 彼らは皆、青い瞳に銀の髪を持っていた。レグルスの目の前にいる女もまた、見事な銀髪に深海のような瞳を持っている。控えめに見ても美人だった。
 少々とっつきにくそうなその印象が玉にきずだろう。気難しそうな雰囲気を感じるのだ。

「それは『クルースニク』として、という意味なのか。残念ながら俺はどちらかと言えば『クドラク』に近いし――そもそも、そのどちらにも属さない」

 『クルースニク』という存在の対極に位置するのが『クドラク』で、こちらはずばりそのもの、吸血鬼だ。
 クドラクとクルースニクは殺しあう運命であり、クドラクはクルースニクにしか殺せない。クルースニクもまた、クドラクにしか殺せない存在だ。
 赤い瞳に黒い髪を持つクドラクの存在は、今やおとぎ話となっているけれど――まだ、実際に存在することをレグルスは知っている。

「知っているわ。でも、『ヒト』じゃないのでしょう?」
「どうしてそんなことが?」

 いぶかしむ様子などなく、ただ淡々と述べたレグルスにクルースニクの女は悲しそうに笑った。

「わたしね、ヒトは愛せないの」


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bkm


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