例えば、一方的な恋を自覚しながら約束の指輪を縫い付けたとしても。

いつかその薬指から約束は抜き取られ、新しい───きっと優しくて大らかで、灰色に何度として噛み付かれても決して虐げずゆったり手を差し出す様な男から、反吐が出る愛の言葉と共に新しい指輪を約束されるのだろう。

どんなに灰被ったビビを愛したって、どんなに可愛い洋服を着せたって、どんなにたくさんの絵で残したって、どんなに幸せの日向を二人で探したって、絡め合う指が解ける頃には片道で誓った永遠も静かに消え、積み重ねた思い出と共に愛したビビをも連れ去られてしまう。

そう思えば、ビビにしてあげられる事なんていくつもないんだと思った。寄り添った夜が明けてまで、ビビの手元に残る花束なんてないんだと思った。

知りながら想う日々は寂しく、なればこそ愛しく。

別れの日に遺された思い出がどうか灰まみれでありますように、願う心はただ姦しい。

ただ姦しい。


いばら姫の片頬


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