宇宙人退治という名目で行った昨夜のお掃除。思えば一日中遊び回っていたわけで、今日はビビが足りずやる気が起きない。数秒程考えた結果、店主の気分により本日のHySyは15時オープン。サボリ魔がぐだぁ〜っとダラけきるソファの上へ、まだ一緒にいられると大喜びしたビビがぴょんと飛び乗った。

くるくる円を描いて飛んだタッチペンはきちんとウタに捕まえてもらえ、なんとか行方不明は避けられた模様。

「宇宙人。えいって。」

「うん。やっつけちゃった」

「わあ…。ウタ、おはなし。」

寝転がりサラサラとウタの髪を梳く中、宇宙人の話が聞きたくて仕方がないビビはゲームを放り、催促する様に高い鼻先へと唇を弾ませる。

空飛ぶUFO、宇宙人。ウタはそれをやっつけた!と思っている様だが、ウタがやっつけたのは宇宙人でも何でもなくただ運の悪いイトリのお金。

円盤に乗っているわけではなく地に建つ普通の家に住み、グレーの肌に大きな頭というわけではなく普通の肌色に容量の小さい頭。珍しい容姿でもなんでもないソレらはビビの言う様にえい、とやっつけられ、今頃スヤスヤ眠っている事だろう。ビビの知らない常世の安楽にて。

はむはむ食べられる睫毛や丸くした手で引っかかれる腹は諦めが来ない怖いもの見たさの催促で、すっかりUFOも宇宙人も信じている。まぁ刷り込んでおいて損はないからと、しつこく強請るビビのおでこに、コンコン。芝居がかった2回のノック。

「こんばんは。夜分遅くにすみません」

「はい。」

「ウチのビビが怖がるので、」

「はい。」

「土に還ってください」

「月…?」

「うん」

「ビビとこ…またくる…?」

こしょこしょ。声を潜めたビビが不安そうに身を寄せた。

“月、帰る”。聞き取りが間違っていなければ、やっつけたのではなくお帰り頂いただけ。これではまた地球に来て追い掛けられてしまう。もし連れて行かれてしまったらきっと、もうウタの所へは戻ってこれない。

さっき迄のワクワクは冷たく沈んだようで、ぞわぞわする背後を振り返り、タオルケットを肩まで引き上げ、そしてタッチペンでくるくる遊ぶウタの手を心細い背中へと導いた。安心。

「こないよ。みんなダルマにしちゃったし…」

「なにマ?」

「ダルマさん。これじゃUFOから出られないしさ、だから…うん。安心して」

「ん。安心。」

可哀想な事にもう死んだ皆さんは足があったってビビの元へは来れないし、ちょっとそこまで〜のお散歩にすら行けない。四肢欠損のダルマ。

薄く微笑んだその目が少しだけ冷たい事、ビビは全く気にしておらずまた一度だけ背後を振り返った。4人の宇宙人よりもよっぽど危険な男から目を離して。

はふ、
深く上下する胸は安心のため息。誉めて誉めて、と首筋にじゃれ付くウタの耳を唇ではむはむ構い、冷々たる黒い襟足を指に絡めると何より温かい指輪となる。ウタが安心していいと言ったなら、もう何も心配することはない。守ってくれた。

よくわからない話の中で点々と理解した単語はイイ子のウタを描いた真っ黒な肖像画で、昨日一日ウタが世間的に悪いことをしてきたとは分かりもしないビビは、いい子の皮を被った悪い男の頭を可愛がる気満々で胸に抱き込んだ。

なでなで。
大袈裟な程に可愛がられる括っていない後ろ髪、ぽにょんと弾む胸枕、これらは愛着の大ウソに対する愛念のご褒美。

「いいこ。ウタ。いいこ。」

ちゅ、ちゅ、
額やら目尻やらに押し付けられる柔らかい唇にウタはふにゃふにゃと目を細める。

もっとして、ぎゅって。あたま撫でて、キスして、くっ付いて。
我儘な要求はまるでビビとウタが入れ替わったみたい。すりすり甘える様に擦りつく胸元、顔をあげれば望んだ通り唇へのご褒美スタンプが貰え、ぷにぷにと数度弾むそれは着々と貯まっていくビビポイント。貯まれば貯まるほどウタがサボリ魔になってしまう、お客さんとしては嬉しくないイベント。

約束の日までにはきっちり仕上げてくれるくせに、しょっちゅうクローズの看板が揺れるスタジオはビビポイントが貯まったからという場合が多い。時間をずらせば開いている時もある為、HySyがクローズかオープンかでその日の運勢を占うお客さんもいると聞く。どうしても急ぎのマスクは屋上へ投げ入れられる事から、お客さんの方が対応し始めているようだ。

この二人が少しくらい離れれば済むお話。ではあるが、そんな事はどうでもいいや、と腰を引き寄せより一層くっ付く。

ゴワゴワのタオルケットに包まってくっ付いた灰色の温かさはやはり誰の目にも触れさせずにずっとそばに置いておきたい。いい匂いで、柔らかくて、銀色の毛玉で、可愛い。よしよし、と頭を撫でられる感覚は心地好く、カチカチの食パンもこんな気分だったのかもしれない。つくづく、皆さん始末してよかったと思う。食パンも、宇宙人も。

ビビがゲームを引っ張り出す気配がするが、すりすり。頬擦られる額は可愛がられたまま。今日は蔑ろにされる事もなさそう。

「ペム?」

「んー…。いいや、飽きちゃった」

「ん。」

ゲームでは色んな人と交流できるからと未だにハマっているビビ。反して通信での馴れ合いにはあまり興味がなく、一人黙々と完全制覇をしたウタはやることがなく新作待ち。はにわも掘り尽くしてしまい集めるモノがなく、お花を植えて村を飾ってもビビがその上を走って蹴散らしてしまうから諦めた。やるとしたらどうしても魚釣りが上手くいかないビビのお手伝いをする程度。

寝転がってぎゅっとウタの頭を抱き締めながらゲームを進めるビビは、またバタバタと他人の村を荒らしまわっている様で元気な足音が聞こえる。重なって、ちゅ。おでこに貰えたスタンプ。ウタを可愛がりたいがゲームもやりたいらしく片手間に頭を撫で、片手間に唇を寄せ、ここにいてと言う様にウタの腰へ足を乗っけた。

ただ可愛がられるばかりのじんわりした温かさはなんとも雲の上で、ほわほわと瞼が微睡みへ向かってしまう。

「寝ちゃいそう…」

つんつん、何かしてなきゃと指先で突つく下乳にはあのビスチェも下着もいない。肩からずり落ちる程ゆるい部屋着だけ。中指の腹でふにゅふにゅ丸みを辿り、行き着いた谷間に下から指を突っ込んでみた。

特に怒るでもなく、応えて頭を撫でたビビは引き続き虫取り。

その様子を上目に窺っていた悪い子ウタが、つん、とした胸の先に唇を寄せる。すりすり。上唇で遊んで、

あぐ。
服の上から噛み付いた。

「、?」

ぴくりと驚いた足がウタの腰を撫で、ぱすっとした虫取り網を振り下ろす間抜けな音。噛み付かれたままの粒がじん、と痺れる尾を引くが、ふにふにの段階を踏まずいきなりでビックリしただけのビビは慣れたもので、もう一度頭をなでなで。

こっちとあそんでて、
とばかりに谷間へ指を突っ込みぐにぐにするウタの手を引っこ抜き、ふにっと胸を包ませる。ご希望通りにふにふにと遊んではいるが、噛み付いたまま離さないウタ。ビビがそのままゲームを再開する素振りを見せると、

かみかみかみ。

「あう、」

決して強くはない力で弾力を楽しみ邪魔をする。困って瞬くビビの瞳をじーっと上目で窺って、ひたすらにもぐもぐ。しれっとした様子はイタズラをやめる気配など少しもなく、ゲームがやりたいのになんとなーく集中できない。

「ウタ。わるいこ…?」

「ぼくはイイ子だよ」

一瞬離れた唇から遮断をと胸に手をやるが、タオルケットに逃げ込んだウタがまたぱくっと食いついた。タオルケットの要塞はいつもビビがやる手口。

ウタがじゃれ付く所為で濡れてしまった服はとても変な感じで、困った困ったと唇をむにむにさせる。飽きる気配のないもぐもぐは、ゲームかウタのどちらかを選びましょうと選択を投げ、少しだけ迷ったビビはパタリと画面を伏せた。どちらかといえばウタを甘やかしたい気分。ウタを可愛がりたい気分。

肩を竦めるようにしてぎゅううっと抱き込んだイタズラっ子のウタはとても温かい。まるで胸に太陽でもあるみたいに。

べたべたに甘やかすビビからタオルケット越しのスタンプを貰い、ひょっこり顔を出したイタズラっ子。唇を強請ってチラつかせた舌にビビがちゅうっと吸い付き、2人一緒にタオルケットへと潜り込んだ。


貯まったポイントにより、本日のオープンは17時からです。


UFOの中身


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