HONEY ORDER
突拍子無く自室の扉が開いたと思えば、そのままいろはに体当たりの勢いで抱きつかれた。
ちょっと「うぎぇっ」なんて奇声をあげてしまったけど、なんとか持ち堪える。自分の長身と筋肉に感謝。運動部じゃなかったら絶対に後頭部を強打していただろう。
「いろは、どしたの?」
小さい子をあやすようにポンポンといろはの頭を軽く叩きながら理由を聞くが、黙秘されてしまった。俺の胸に顔を埋めているので表情が読めない。その代わり俺の服を掴むいろはの力が強くなる。
うむ。これは「言いたくない」「聞かれたくない」ということでいいのかな?
ならば質問を変えよう。
「俺はどうすればいい?」
たっぷり十秒経って、いろははぽつりぽつりと話し始める。
「頭、撫でて」
「うん。いいよ」
「いっぱい、ぎゅってして」
「わかった。あとは?」
「私のいいところ、十個言って」
「他には?」
促せば、再び無言になって。
「…猿杙大和が今までしたことがないくらい、これでもかってくらい、奥山いろはを甘やかして」
いつも笑ってるといわれる俺の顔は、今、本当に他人に見せられない程度には緩んでいるんだろうなぁ。
首筋まで赤くなってまで、可愛いワガママを言ってくれた彼女に俺は応えるべく、まずは彼女の頭を撫でた。