表裏一体


「俺、あんたのこと嫌い」

奥山の両眼からぼろりと大粒がこぼれる。
あ、泣いた。俺は漠然と思う。焦燥も罪悪感もなく、ただ目の前の事象を見つめる。
透明な涙は輪郭に沿って地面に落ちる。音もせず静かに静かにコンクリートの色を変えていく。

「やさしくて、お人好しなアンタが嫌い。平等主義のアンタが嫌い。いつも他人の顔色ばっか気にしてるアンタが嫌い。自分の体型を気にしてるアンタが嫌い。頑張り屋なアンタが嫌い。諦めてるアンタが嫌い。先輩ぶってるアンタが嫌い。本当は誰よりも嫉妬深くて醜くて汚いアンタが俺は大嫌い」

羞恥と困惑と恐怖と絶望?
あふれ出る涙がとまらない。ぜんぶ当たってるから。図星だから。

「だから」

俺は笑う。いつもみたいに、にっこりと。

「おれがぜんぶこわしてあげる」

=end=