またひとつ学びました


自習室で黙々と宿題中、誰かが入ってきた気配がしたと思えば机上に小さな可愛らしい包装が一つ転がった。
あ、これ私の好きなお菓子じゃん。顔を上げれば川西が立っていた。

「あれ?川西どうしたの?部活は?」
「これから行くけど、ドアから奥山見えたから来てみた」
「わざわざ邪魔しに来たわけってか?だったら寄り道しないで部活行けよ」
「うわ、冷てー。せっかくお裾分けしに来てやったのに」

お裾分け?なんのことか一瞬わからなくて首をかしげれば、川西が菓子を指差した。

「これ、おまえ好きだろ?」
「え、何?もらっていいの?」
「そうじゃなかったら、わさわざ目の前に置かねーわ。どーぞお召し上がりください」
「わーい、ありがとー」

ならば遠慮なく頂く。鞄に入れて素直にお礼を告げれば、心なしか不満そうな彼。
「食わねーの?」
「部屋に戻ったら食べるよ?」
「…あっそ」

やはり不満そう。

「だって大事に食べたいじゃん。せっかく川西がくれたんだから。それじゃダメかい?」

きょとんと目を丸くしたあと、川西はポリポリ頬をかく。

「…そんなもんでも大事にしてくれんのな」
「そんなん当たり前じゃん?」

言えば、川西は「勉強不足でした」と仰いだ。
やっぱり分からず首をかしげれば、今度は満足そうに笑った。