生徒会長さんと副主将くん



「つっかれたぁー!」

今日は生徒総会だった。
会長からの挨拶。
校長じゃないんだからよくない?今年もよろしく、でいいじゃない。それを伝統ある青葉云々かんぬん長ったらしくしんどかった。

いや。生徒会は楽しいよ。瑞穂もいるし。
それこそ瑞穂が心配で、生徒総会どころじゃなかったけど。
逆に本人に喝入れられちゃった。

「お疲れ。今日は普通だったじゃねえか。」

おばさまが向いてくれたリンゴを頬張る。甘い。お風呂から上がったやつは、短パンタンクトップ。
…虫取り少年か。

「これ以上部活に支障きたせないし。」

もう一つ。しゃきっと新鮮な音がする。甘い!

「あの主将、変わらなさそうだし。」

更にもう一つ。

「それにあんまりしつこくやると瑞穂怒るし。」

もういっこ、

「デブるぞ。」
「うっ…。」

リンゴは果物だもん。そんなカロリー高くないもん。早々太らないもん。

「さっきだって二杯も米食ったじゃん。」

ううう…。それは事実。

「だっておばさまのご飯美味しいんだもん!そりゃあおかわりするよ!あんな笑顔でおかわりいる?って聞かれたら!二杯でも十杯でも!」
「そんなに食ったら釜ん中足りねえよ。」
「言葉の綾でしょー!」

一言余計だな!この天然男は!
ふくらはぎに蹴りを入れる。

「って!乱暴娘!」

それだけ言って隣に腰を下ろしてくれる。
今日で2回目になる。
彼の家に泊まるのは。
隣に楓が住んでいるのは知っていたが、まさかこの窓を開けると楓の部屋の窓があるなんて。少女漫画かよ。

「いつも開けてるの?」

カーテン、と付け足す。
それに対して、ん?と短く言ってからそこを見る。
またげるほどの距離。
昔はよく行き来していた、と楓が言っていたな。
その部屋に明かりはついていない。

「別に見られて困るもんもないし、暑いからよく開けてる。アイツは閉めたままだけどな。」

それだけ告げて、窓を見つめる。

「もう寝たのかな?」

ノックしてやろうか。「なにー!もううるさいなー!」とか言って開けてくるところをドヤ顔で見てやりたい。

「いや、帰りが遅えだけだろ。」

もう22時だぞ。どこで油売ってんだ不良娘が。
別れた後、まっすぐ帰らないのだろうか?
バイトはしてないはずだけど。
交流関係も広くない。

「高校上がってからすぐだな。帰り遅くなったの。放任だから何も言われてないみたいだし。」

こいつにとって、楓とはどんな位置なんだろうか。
幼馴染?妹?

「ふぅん?」

好きになったことある?実は昔付き合ってたとか?だってこんなに近いんだよ?
友達もいなかったって。あなたとアイツだけで。

「お前もしかして…妬いてんの?」
「まぁ、妬くよね。」
「菜々実…。」

そりゃあ妬きますよ。
だって楓、なんていうか、末っ子オーラ出してて…。仕方ないなぁって世話焼きたくなるんだよね。
あたしが男だったら、好意を抱いたかもしれない。
いるんだよね。無意識なのに、男心をくすぐる人って。
多分、甘やかされたんだろうなぁ。こいつに。いや、もう一人にかも。

「甘えるなんて気味悪いな。熱でもあるんじゃねえの?」
「はぁ?!」

なんて失礼な男。
なぁーんて。知ってるよ。照れてるの。耳、赤いもの。

「瑞穂にはね、沢山聞いたつもり。泣いていいよ、って。でも、…違うの。なんていうか。うまく言えないけど、根っこの部分が違う。」

笑顔で大丈夫、と答える。
本当に笑顔で。
誤魔化すのが上手いから。
いつも1人でなんとかしようと笑顔で。
でもね、瑞穂?一瞬。本当に一瞬違うんだよ。目が。
目だけが本気で訴えてる。
それを悟られまいと繕うのも上手。
きっと後悔してる。言わなければよかった。
と。
心配かけていいの。迷惑かけていいの。
あたしたち友達でしょ?いつもいつも誤魔化して。
じゃあ本当に泣きたい時はどうするの?
誰にそれを伝えるの?

「…お前はしっかり立ってろよ。」
「え?」
「辛くなったら支えてやるから。お前は見失うな。」

そうやって抱きしめてくれるはじめの腕が好き。
安心感をくれる声が好き。
ねえ瑞穂。
あたしははじめがいるから、辛いことがあっても頑張れる。
はじめに支えてもらってる。
だから、あたしが瑞穂を支えるから。
楓も瑞穂も支えるよ?
本当に泣きたい時くらい。
迷惑かけてよ。




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