「西谷ぁー。」
「おー。おおっ冬子じゃねえか!久しぶりだな!どうした!?」


昼休み、1組を出て3組に向かう。

…姿は無い。何故か女子が1人もいない。佐竹はひとつため息をついて、仕方なく西谷を呼んだ。
彼は今、訳あって謹慎中なのでバレー部には顔を出していない。しかしレシーブが弱い烏野にとって唯一無二のプレーヤーだ。


「謹慎解けるのっていつだっけ?」
「…なんだよいきなり。一応来週だけど?」
「ふぅん…」
「聞いといてその反応かよ!つーかそんなこと聞きに来たのか?」
「あ、ごめん。それはどうでもよかった。夏乃、じゃない、橋沼見てない?」


どうでもいいって、相変わらずだな冬子は。
西谷は嘆息してから橋沼か、と呟く。


「バレー部の主将教えろっつってたから、大地さんのクラス言ったら凄い勢いで出ていったぞ。」
「え?主将のとこ行ったの?」
「おう!なんで知りたいのか聞いたら、人間だものとかよくわかんねーこと言ってたぜ。」
「…あー。大丈夫、それがデフォルトだから。わかったありがとう。」


今日無理矢理引っ張っていこうと思ったけど。そうかそうか。言われる前に実行したか。
ここで待ってようかな、楽しみだなぁ。


「新マネージャー!」


思わず口笛を吹きそうになるが、こらえて教室に戻った。









「はぁぁぁぁぁぁぁっ」


やって、しまった…。
意を決して大地バリボー主将先輩に会いに行ったけど、…でかいの。
怖い怖い、うちみたいな下等生物はそこから動けねえよな。

「あれ?君って確か…」とかチャームポイントは!nakibok以下略先輩と同じこと言ってたし、夏乃ビビっちゃう☆てへぺろ。
だから「な、ナイスバリボー!」とか言って紙飛行機にして投げつけちゃった。入部届。
冬子にバレたら殺される。

我ながら逃げ足の速さには感心するよ。まったく追いかけて来なかったけど。


「死にたくない死にたく死にたくない。逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ逃げちゃだめだ」


ってキャラいたよね。


「あの…大丈夫ですか?」
「どなたですか?」
「え。」


縁下は動揺した。頭を抱えて蹲ってる人がいるから、もしかしたら体調が悪いのかと思い声をかけたのだが、開口一番が「どなたですか」である。
いや、間違ってはいないのだが、ちょっと怯んだ。

しかもよく見るとこの人、試合で観客席にいた。佐竹さんとよく喋ってるよね。名前は知らないけど。


「え、縁下…です。」
「力持ちか!いい名字ですね!ご丁寧にどうもありがとうございます。橋沼です、まあ心が沼沼してるのは確かですけどそこまで言うのは失礼じゃない?!」


どなたですか、って言ったからじゃないの…?しかもそこまで言えとか言ってないし。
佐竹さんの友達、変。


「んで力さんなんですか?」
「あ、うん。蹲ってるから、体調悪いのかなっと思って。」
「大丈夫です、そこらへんの石だと思ってスルーしてください。」
「え、」


石って。でかすぎでしょ。橋沼さんは立ち上がって、じゃあ、と短く告げると、ふらふらと歩いていった。

…橋沼さん、変。


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