「さて、こんなもんかな。一応2人は経験者ってことだし、軽く練習してみるか。」
「はい!」
山口はこう…なんだ?後輩的な元気さがあるんだけど、なんなの月島のあのやる気のなさ!あれで1年とか嘘でしょ。2年だよ!でかいから見下ろされるとちょっと怖いし。
「じゃあ軽ーくやるか。スガ!いいか?」
「おう。」
「緊張しなくていいから、レシーブしてくれるか?」
「はっはい!」
「じゃあ山口から行くか。」
ノートに名前と簡単な特徴を書き入れる。
なにがこれから使えるかわからないから、とりあえず思い付いたこと気付いたことは片っ端から。
利き腕、踏み切る方の足、着地する足、癖、跳躍力、関節の稼動域。
主将は何度か続けてやってくれるから、ある程度書き出しやすくて本当に助かる。
「よーし、次!月島!」
「はい。」
来たな。無気力ノッポ。しっかり観察してあげるから覚悟なさいよ。
ノートの名前の横には金髪眼鏡ノッポって書いてある。ちなみに、山口は黒髪アンテナ後輩くんだ。
それにしても、どうみても無気力だ。やる気がないのか元々かわからないけれど、レシーブは山口よりも不安定。身長があるから少し跳ぶだけでとんでもない高さになるけど、それも気軽に跳んでる感じ。
さすがに利き脚なんかはやる気があろうとなかろうと、変わらないみたいだけどね。
「うん、お疲れ。」
「あの、どうしてレシーブからなんですか?」
「月島たちの他にもう2人、1年が入部するんだけどな?まぁいろいろあって、明日の土曜日に入部テストみたいなことをするんだ。」
「入部テストって…なにやったんですか?」
「まぁそれは後で教えるよ。そのテストで3対3でミニゲームをするんだが、月島と山口にはその2人と試合をしてもらおうと思ってる。」
「じゃあ、その2人はまだ入部してないってことですか?」
「そうなるな。」
たぶんだけど、その1年2人も入部するんだろうな。なんだかんだで主将は優しいから。
「僕たちが負けたらなにかあるんですか?」
「いや。ペナルティがあるのは入部してない1年だけで、月島たちには特に何も考えてないよ。」
「…そうですか。」
うーわ。めんどくさそう。
「少し休憩挟んでから本格的な練習にしようか。1年は先輩たちに話を聞きにいってもいいからな。」
「はい。」
「ふむふむ、」
横で夏乃が一生懸命ノートを取っていた。
やるからには徹底的に、か。彼女なりのメモだ。
『初心者でもわかるバレーボール』と書かれた本を必死に読んでいる。今かよ。
「へぇー。今図書室ってそんなんあるんだな。」
菅原先輩が夏乃に合わせてしゃがんで覗き込んでいる。
昼休みにでも借りたのだろうか。
「ひえええ!」
「なぁんでいちいち驚くんだよ。」
菅原先輩に気づいた夏乃が本を急いでしまう。
菅原先輩は夏乃が気に入ったみたいで夏乃の動作に笑みをこぼしている。
「ねえねえツッキー、あのマネージャーの人って入ったばっかりなのかな?」
「さあ?」
「でも2年生って言ってたよね?1年の時は何してたんだろうね。」
「知らない。」
「マネージャーが3人もいるってすごいよねツッキー!」
「山口うるさい。」
「ごめんツッキー。」
山口はよく喋る。一方の月島は気だるそう。ツッキーって呼んでるってことは、仲いいんだよね?まだ始まったばっかりだし…同じ中学だったのかな?
私と夏乃は小学校からだけど。
山口ってあんなに、いかにも話聞いてなさそうなやつに一生懸命喋って…。いい子か。
「…なんですか。」
「月島って面倒くさそう。」
「…は?」
うーわ、不服そうな顔。1年はね!はいはい元気に返事した方が可愛気が…月島は微妙。
その顔で超絶微笑とか、無いわ。
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