冬子はなんの説明もなしに女子トイレに鞄を持ったまま入っていった。
トイレにいくなら鞄預かるのに。そう思って外で待ってたら冬子はジャージに着替えてきた。
「あ、そっか。」
「そっかじゃないでしょ。なんで着替えてないのよ」
「持ってきてないもん。」
「はぁ?なんでよ」
「あれだけ急かされたら忘れるよ!昨日寝たの3:00なんだからね!」
「そんなこと知らないわよ!早く寝なさいよ!」
「せめて朝練出るとか言ってくれたらよかったのに。」
「こんな時間から学校とか普通に考えて朝練しかないでしょ。」
「帰宅部に運動部の常識を押し付けないでください。」
「まぁ初日だから見学ってことで主将も許してくれるだろうし、とりあえずこのまま行くよ。」
「はーい。」
2人で向かうは体育館。
男子バレー部は第二体育館。女バレは男バスと一緒に大きい体育館の方だって。男バレで貸切ですな。
「ふふっ。」
「何よ気持ち悪い。」
男子バレー部が何人いるかは知らんが、マネージャーは確か美しい先輩がいるんだって。冬子言ってた。
確かにいた。清水先輩。あれはもう女神レベルでしょ、作品な。QPGで言うなら拐われる役な。ピンクなお姫様な。
「それに、男子ばっかりってことは、そういうことでしょう?」
「誰も付き合ってないよ。少なくとも男同士では。」
…冷たい。いや、あれはさ2次元だからいいんだよね。うち的には。
でも冬子の誘い文句がさ、「ほら、男子いっぱいだよ?好きでしょそういうの?」だったし?人のことなんだと思ってんのさ!
「お、来たか佐竹、橋沼」
…おうふ。第1関門。主将先輩…。
「橋沼、よろし」
「すみませんでしたぁぁぁあああああ!!」
「は?!」
「土下座?!」
あれ?なんか聞いたことある声がする?
怒られる前にそりゃあ土下座もするよね。ちなみに階段上がって直ぐだから、冬子はまず体育館にも入れてないけどね。
土下座、得意だからね。
「と、とりあえず顔あげようか?」
「橋沼さんって本当にウケんなー。」
「ど、どげっ、女子が土下座とか、っ、ぶふっ」
くそっ!キングダム先輩また頭を撫でやがって!なんだ!人のこと犬と勘違いしてんのか?!失礼な!石ころだわ!
て言うかあの笑いこらえきれてないあいつ!確か去年同じクラスだったやつだ。簡単な名前だった気がする。
「た…山田?」
「田中だ!」
「いいから立ちなさい夏乃。」
「怒ってないから立ちなさいね?橋沼。」
…冬子と似てる。主将先輩。
こっえーーーー!怖い怖い怖い!橋沼のライフ0だからもう瀕死だから!空気が冷たい気がする。なるほどね、オーケーオーケー怖いです!
「‥昨日はす、し…すみませんでした。」
咬んでしまった…。立ち上がって冬子の後ろに隠れる。
「(寿司?)いや、いいよ。緊張してたんだもんな。改めてよろしくな。」
「(寿司?)いやーよかったじゃん大地!マネージャー増えて!可愛いし!」
「(スガさんサラッと…)いや、橋沼ってやっぱお前な!1年の時同じクラスだっためでたそうな奴か!」
「山田潰す!」
「田中だコラ!」
山田怖い!?こういううぇーい系嫌い、ほんと嫌い。なんだよ西谷と知り合いか?!クラスにもうぇーいがいるのに部活にもうぇーいがいるとか…死にゲー。
「あ。主将、重ねてすみません。」
「どうした?」
「橋沼なんですけど、朝急いでたからジャージを忘れたみたいで。なので朝練は見学になるんですけど。」
忘れたのは急がされたからだよ!朝練も聞いてなかったし!
「ああ、それくらい構わないよ。放課後はどうするんだ?」
「体操着でも着せときます。」
うちはきせかえ人形じゃないよ。
「まだ清水も初心者にそんな難しいことは言わないと思うし、今日は見学でいいよ。」
「ありがとうございますっ」
「え、あ!ありがとうございます!」
冬子がなんかすごい勢いで頭をさげたから、一緒にさげておいた。
怖いのは、嫌だ…
「大地、あんまり話してても時間なくなるし、練習するべ。」
「そうだな。」
体育館に入った先輩の後について入る冬子。
今初めてまともに体育館見たけど、ネットって張りっぱなしなの?バレー部しか使わないから?でも体育…
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