煙草の香りと(ロゼ)





そっとフェンスの向こうから先生を眺めるのが楽しみとなった。
えるに必死に頼んでこうやって見ていると、他校の生徒だからか不思議そうに見られる。
「見慣れん制服や」
「まぁ、関東の制服やから」
ここの生徒と思われる私でさえ見た事のない人は、ふーん…とだけ言って離れて行った。今のは少し無愛想だったのだろうか。
けれど私はこの立派なテニス部にしか要はなくて、フェンスの向こうにまたまた顔を向ける。
「おお、来たんかお二人さん」
そう言ったのはここの部長の白石だ。
「こっちくるだけでお金空っぽだから誰かにせがまないとりんか私が帰れないんだよね、助けて白石」
なんて冗談をよりは言う。そんな事を中学生に言ったところで仕方ないのだが。
「せやってー、オサムちゃんー」
すると、ずっと奥で立っていた先生はこちらへ近付いてきた。
「そかー、オサムちゃんも財布ん中空っぽやでー。りん一緒に住むかー」
「やめとき、犯罪や」
そんな白石と先生のやり取りを見て、よりは呆れ顔だ。私はそれでも嬉しいのだが、流石に関東から大阪まで行くのは疲れる上に時間もかかる。
「じゃあそろそろ帰るわ。またね」
そう言って私達は風のようにやってきて、風のように去って行く。
だからこそ、ほんの少しだけでも先生を眺められるだけで幸せだ。
「今度は俺がそっち行くわ、待っとき」
にやりとした笑みを浮かべた先生に小さく頷くと、よりはまた一つ溜め息ついた。



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