雨の香りと(ロゼ/切)



風は吹かないが、それでも激しい雨が降り注ぐ。久しく車を呼ばず、降り出した雨はただのスコールだ。
こんな日は部活がない。氷帝と言えど、そこまで厳しくない。雨に打たれて風邪を引かれる方が問題だ。
そんな天候の中、帰宅部の彼女は帰らなかった。濡れた電柱の画像を携帯で見たり、音楽プレイヤーで音楽を聴いたり、読書をしたり。しかし、どれもが3分程度で終わり、中々集中できない状況のようだ。かといって、そんな彼女に声を掛けようとはしない。そんな彼女を20分程廊下で眺めた後、彼女は手ぶらで教室を飛び出し、廊下を急ぐように掛ける。目を疑った。初めてこんな姿を見たのだ。
「おい…!!」
焦った声を無視して、彼女は遠くを掛ける。俺は嫌な予感と共に、自分も全力で掛けた。この雨できっと校内に残る者も少ないだろうから、彼女を追いかけて。


校外から300メートルほど走った後、彼女はいきなり止まった。濡れて透けたシャツに体を震わせ、マンホールとアスファルトの溝にできた水溜りに倒れるように立膝をつく。それを見て、少しずつ近付いて、彼女はなんで…と言った。

その後、彼女が転校することなど今のは俺は知らない。




<< >>


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -